研究課題
頭頸部がんにおいても、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)であるニボルマブ、ペンブロリズマブが、2017年、2019年にそれぞれ国内において保険適応となり、免疫治療が、新な治療法として期待されている。しかしながら、ICI による治療効果は未だ限られており、新たな免疫治療法の開発が求められている。制御性T細胞(Treg)はがん組織内免疫環境に対して抑制的に働くと考えられており、最近、免疫治療開発の標的となっている。頭頸部扁平上皮がん(HNSCC)を対象として多重蛍光免疫染色(MFIS)とフローサイトメトリー(FCM)によって、がん組織内免疫チェックポイント分子(ICM)の発現と、Treg の浸潤、および、Treg サブセット解析を行い、頭頸部がん免疫抑制環境形成に及ぼす、ICM, Treg の関わりについて検討した。MFIS解析でがん細胞上PD-L1の発現について検討したところ、28例中、14例において、5%以上に発現がみられ、内、8例においては50%以上に発現が見られた。さらに、すべての症例において浸潤T細胞の50%以上がPD-1陽性であった。また、多くの症例においてFOXP3+T細胞(Treg)の強い浸潤がみられた。FCMでがん組織浸潤CD4+T細胞中エフェクターTreg(eTreg;CD45RA-FOXP3hi)の頻度(36.3%±12.5)を検討したところ、末梢血(4.3%±3.7)に比べて、著しく高かった。また、eTreg上のCD25及び各種ICMの発現も末梢血に比べて著しく高く、HNSCC組織においては活性化されたeTregが強く浸潤していることが明らかとなった。以上の結果から、免疫チェックポイントの他にeTregがHNSCC組織内免疫抑制環境の形成に強く関与しており、ICIとTreg制御の複合免疫療法がHNSCCに対する新たな治療法として有用と考えられた。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件)
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