本研究は、基礎研究から予測される候補バイオマーカーを臨床サンプルで非網羅的に検証する方法論を用いることで、消化器がんの中でも特に大腸がんにおける新規抗がん剤の治療効果に関する信頼性の高い効果予測バイオマーカーの同定を目的とする。がん細胞株の薬剤感受性に関する独自のデータベース JFCR39(がん細胞パネル)、及び、包括的トランスクリプトーム解析を用いて抽出したFTDの効果予測因子の候補の血清学的定量をTrifluridine/tipiracil (FTD/TPI)に血管新生阻害剤を併用する新規コホートで行い、解析を行った。既存のFTD/TPIを投与されたコホートで得られた結果との統合解析を現在行っており、血管新生阻害剤を併用することによる治療効果に関する作用機序の違いについても明らかにする予定である。 レゴラフェニブについてはCCL5/CCR5 signaling pathwayにおけるCCR5とそのリガンドの血清学的定量により予後予測に関する調査を行った結果、レゴラフェニブ投与によりCCL3とCCL4の血清レベルは逆パターンの変化を示した。すでに報告したCCL5とVEGF-A産生のsignalingに加えて、新たなCCR5 とそのリガンドにより構成されるネットワークにおける抗腫瘍効果の作用機序の一つと考えられた。さらに同pathway上の遺伝子の遺伝子多型と血清学的定量の相関についても解析を進めてきており、今後解析結果を発表する予定である。
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