研究課題
本研究は、ナノ粒子系中に効率よく放射性核種で標識した後、生体中低分子または生体高分子を導入する方法を見いだす。今後の放射性ナノ薬剤の分子設計に役立つことを目的する。今年度も主に放射性ナノ粒子の調製を試みた。ジルコニウム-89および銅-64は当研究所で製造したものを用いた。ジルコニウム-89のシュウ酸水溶液、炭酸水素ナトリウムで中和したジルコニウム-89水溶液を調製した。またシュウ酸を除去するためにQMAカートリッジに吸着後、リン酸カリウム緩衝液(pH7.2)で抽出したジルコニウム-89も調製した。コールド体として三種類のジルコニウム塩とを用いてジルコニウム-89含有ナノ粒子の作成を試みた。分散液として、ネオデカン酸ナトリウム水溶液 (5mM)コールド試薬濃度 (1mM-10mM)、溶媒 (イソプロパノール、n-ブタノール、DMF)と温度 (120℃-150℃)で行ったが導入量は1%未満であった。銅-64ナノ粒子は前年度検討した方法を用いて調製を行い、末端にアミノ基またはチオール基をもつ平均分子量5000のPEGで修飾を試みた。水溶液中にそれぞれ混合し後、超音波で分散した。分散液を室温で静置または100℃で1時間反応を試みた。混合時は透明だったが、沈殿が生じていた。超音波で再分散、またエタノールを添加しで超音波で再分散したものの、透明な溶液にはならなかった。また反応混合物をゲル濾過HPLCで確認したところ、未反応物が30%程度残留していることも確認した。次に放射性ナノ薬剤に導入する環状ペプチドとしてisoDGRの生体内挙動を調べるために、c(-phg-isoDGRk)のリジン側鎖にDOTAを導入した後、銅-64で標識を行った。放射科学的収率および放射化学純度は99%以上であった。B16B10癌細胞を播種したマウスに投与し、PET撮像を行った。その結果、癌細胞に集積するものの速やかに腎に排出することがわかった。
3: やや遅れている
ジルコニウム-89を用いたナノ粒子の調製について、考えていた以上に導入が困難であった。また銅-64ナノ粒子の表面修飾も予想されていた挙動と大きく異なっていたため、研究の進展に遅れが生じたため。
ジルコニウム-89を用いたナノ粒子の調製について、考えていた以上に導入が困難であったため、銅-64を用いたナノ粒子の調製をさらに検討する。銅-64ナノ粒子の表面修飾はPEG以外の高分子を導入検討する。特にポリビニルアルコール、ポリアクリル酸で表面改変を行った後、PEGを導入する試みを行う。放射性ナノ薬剤に導入する環状ペプチドとしてc(-phg-isoDGRK)の生体内挙動も明らかにし、さらにナノ薬剤への導入による多価化の差異をPET撮像にて明らかにする。
購入するための試薬類が予想以上に納期がかかることがわかった。その試薬類を来年度に購入する。
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巻: - ページ: -
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