研究課題
本研究は、ナノ粒子系中に効率よく放射性核種で標識した後、生体中低分子または生体高分子を導入する方法を見いだす。今後の放射性ナノ薬剤の分子設計に役立つことを目的する。今年度は64Cuのナノ粒子調製を主とした。銅-64水溶液を超純水で希釈した放射能量185MBqに塩化銅水溶液(10mM)とシクロデキストリン(1mM)を加えた。次に還元剤として、アスコルビン酸(10mg/mL)を添加し反応を行った。遠心分離による洗浄を行った後末端にアミノ基またはチオール基をもつ平均分子量10000のPEGで修飾を試みた。水溶液中にそれぞれ混合し後、超音波で分散した。遠心分離を行って沈殿物を超純水で洗浄する工程を2回繰り返した。また、アミノ-PEG-チオール基を用いて上述と同様の操作も行った。調製時間は三時間で64Cu導入量は10%前後であった。三種類の64Cuナノ薬剤の溶液中の安定性を安定性を検討したところ、24時間後で未変化体が90%残存していた。放射性ナノ薬剤に導入する環状ペプチドとしてisoDGRの生体内挙動を調べるために、c(-phg-isoDGRK)のリジン側鎖にDOTAを導入した後、銅-64で標識を行った。放射科学的収率および放射化学純度は99%以上であった。B16B10癌細胞を播種したマウスに投与し、PET撮像を行った。その結果、癌細胞に集積するものの速やかに腎に排出することがわかった。
4: 遅れている
銅-64およびジルコニウム-89の提供スケジュールや薬剤購入の大幅な遅延が生じ、大幅に実験計画を変更した。
銅-64を用いたナノ粒子の調製をさらに検討する。銅-64ナノ粒子の表面修飾はPEG以外の高分子を導入検討する。放射性ナノ薬剤に導入する環状ペプチドとしてc(-phg-isoDGRK)の生体内挙動も明らかにし、さらにナノ薬剤への導入による多価化の差異をPET撮像にて明らかにする。
購入するための試薬類が予想以上に納期がかかることがわかった。その試薬類を来年度に購入する。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件)
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