研究課題/領域番号 |
18K07283
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
塩川 大介 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (90277278)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 大腸がん / シングルセル / 遺伝子発現解析 / Wntシグナル |
研究実績の概要 |
がん組織を構成する細胞は均一では無く、異なった性状を持つ細胞群から成るヘテロな集団であることが知られている。この現象は「がんの細胞不均一性」と呼ばれ、がん細胞に起こる遺伝子変化、さらにはがん幹細胞を頂点とする細胞分化などの要因により惹起されると考えられている。しかし、実際のがん組織がどのような種類の細胞群から構成されるかに関しては、現在まで主に免疫染色等の手法に基づき分類されているに過ぎず、その詳細は不明な点が多い。さらにがん発生の本質とも考えられる幹細胞群のがん化に伴う変化、不均一性に至っては、その本格的な解析がこれまで行われていない。 本課題に於いては、「当該幹細胞集団の詳細な性状の理解」、「特徴的な高発現遺伝子の網羅的探索」、さらに、がん幹細胞を標的とするがん治療法の開発を目指した「新規な治療標的遺伝子の発見」を目標に実施されている。 本研究課題令和元年度の研究成果として我々は、MinマウスDSS誘導大腸発がんモデルを用い、がん部を構成する上皮細胞群からLgr5陽性大腸がん幹細胞集団を抽出、当該細胞群をシングルセルRNA-seq法を用いて解析した。得られた遺伝子発現プロファイルに基づき、機能的に異なる3種の細胞群に分類する事に成功した。さらにここで見いだされた細胞多様性の大腸発がんに伴う変化を解析し、吸収系及び分泌系細胞群それぞれの様々な分化段階に於ける細胞分布どのように変化するのか、さらに正常幹細胞はどのようにがん幹細胞へと変わってゆくのかを遺伝子発現レベルで明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
理由、本研究課題の研究計画に於いては、令和元年度の達成目標をCRISPR/Cas9システムを用いた治療標的候補遺伝子の機能解析に定めていた。実際の研究に於いては、当初計画していた作業を順調に進めることができ、抗がん剤抵抗性を示す細胞集団の性状解析、さらに薬剤耐性の獲得に重要なマスター転写因子の同定に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度に行われた研究成果により、大腸がんの発生過程で重要な役割を果たすと考えられる遺伝子の候補を複数得た。さらに令和元年度の研究成果により抗がん剤抵抗性を示す細胞集団の性状、さらに薬剤耐性の獲得に重要なマスター転写因子を明らかにすることができた。令和2年度の研究計画に於いては、これまでの研究成果により得られた知見に基づき、薬剤耐性を人為的にコントロールし大腸がんの根治療法の開発へとつながる基礎研究を展開する。具体的には、我々が見出した薬剤耐性マスター転写因子の標的遺伝子をRNA-seq法を用いて網羅的に解析し、がん細胞に薬剤耐性を与えるエフェクター因子の同定を試みる、さらには当該エフェクター因子の活性を制御可能な小分子の探索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度の研究計画においては、当初シングルセルRNA-seqによる様々な大腸がん細胞の多様性解析を主に行う予定であった。しかし、平成30年度の研究成果として見出された大腸がんの発生過程で重要な役割を果たすと考えられる遺伝子候補の機能解析において重要な発見があり、当初の計画を変更し当該遺伝子に関する実験を主に行なったため未使用額が生じた。このためRNA-seqによるトランスクリプトーム解析の主要部分は次年度に行うよう計画を変更し、未使用額はその費用に充てることを希望している。
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