研究課題
エプスタイン-バーウイルス(EBV)/ヒトヘルペスウイルス4型関連胃癌(EBVaGC)は、通常in situハイブリダイゼーション(ISH)法によって診断される。 The Cancer Genome Atlas(TCGA)-胃がん(STAD)プロジェクトにおけるEBV分子サブタイプは、ISH法ではなく複数の次世代シークエンシング(NGS)法の組み合わせによって決定され、TCGA-STAD研究では、EBV分子サブタイプと他のサブタイプ間で予後に差がないことも示された。最近、TCGA臨床リソースデータセットの生存データの有用性が報告され、STADデータセットの使用も推奨された。さらに、TCGA臨床データの病理組織情報は、WHO国際腫瘍学分類第3版(ICD-O-3)用語に統一された。そこで、我々はTCGA-STADのRNA-seqデータの再分析を実施した。我々は広範囲かつ信頼できるEBV由来のNGSリードを過去の報告と比較して大量に得ることができた。再分析データに基づいたEBV陽性症例では、EBV陰性症例と比較して、adenocarcinoma NOSで統計学的有意に長い全生存期間(OS)、tubular adenocarcinomaで統計学的有意に短いOSが示された。我々の結果は、EBV由来のリードがこれまで考えられているよりも多く胃がんで検出されること、および、EBVは少なくとも2種の胃がん病理組織型の予後にそれぞれ異なる影響を与えることを示唆した。
2: おおむね順調に進展している
TCGAの制限公開データの取得が順調に進み、土台としてのRNA-SeqデータからのEBウイルス検出解析パイプラインを構築することができた。さらに、TCGA胃がんデータを用いたEBV関連胃がんについての新しい知見を得ることが出来、当初の計画どおりに進んでいると思われる。
今後は、取得したTCGAの制限公開データを用いて、pan-cancerレベルでのウイルス検出をがん種横断的に実施し、主要ながんウイルスがどの程度検出されるのか、そしてがんウイルス陽性例と予後との関連があるかどうか等について、探索を行っていく予定である。
本年度はTCGA胃がんデータのdry解析を集中的に実施し、wet解析は実施できなかったため、使用予定であった物品費の執行がなく次年度使用額が生じた。次年度使用額については、物品としては、DNA、RNA等の検出によるバリデーションの実施、ハードディスク等の購入のほか、バイオインフォマティクス人件費等に振り替えて使用する計画である。
すべて 2018
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
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