研究課題/領域番号 |
18K07285
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
太田 里永子 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 研究員 (30452460)
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研究分担者 |
葛島 清隆 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍免疫応答研究分野, 分野長 (30311442) [辞退]
今井 優樹 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (30440936)
岡村 文子 (出町文子) 愛知県がんセンター(研究所), 腫瘍免疫応答研究分野, 主任研究員 (10546948)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | T細胞受容体 / 親和性の成熟 / がん特異的TCR |
研究実績の概要 |
TCR(T細胞受容体)の親和性の成熟をin vitroで行う方法として、ファージディスプレイ法があるが、もともとTCRは抗体に比べて、抗原との親和性が低く、そのため、抗原へのきわめて高精度な特異性があっても、一価での親和性が低いTCRでは、ファージディスプレイ法による親和性の成熟は困難であった。 そこで、ファージディスプレイ法に代わる新たな親和性の成熟方法として、「293T細胞ディスプレイ法」を考案した。 遺伝子導入効率のよい293T細胞をベースに、安定してTCRが細胞表面に発現するためには、CD3の4つのサブユニットγδεζが必要である。また、TCRがMHCと反応するときに、補助分子CD8αβが必要である。はじめに、293T細胞に、CD3の4つのサブユニットの遺伝子と、CD8の2つの遺伝子を、ウイルスベクターを用いて導入しTCRの評価用の細胞を作成した。 我々の保有しているがん抗原hTERTに対する野生型のTCRを、293T-CD3細胞に遺伝子導入したところ、MHCテトラマー試薬で、検出できなかった。一方、293T-CD3-CD8細胞に導入したところ、MHCコントロールテトラマーでも陽性に反応性を示し、抗原特異的な反応がみられなかった。CD8は、293T細胞上に発現させると、非特異的にMHCに結合することが考えられた。この結果から、あえて、293T細胞に補助分子CD8分子を導入しない293T-CD3細胞を用いることで、TCRの抗原認識部位(相補性決定領域、CDR)に変異が入り高親和性になったときにのみ、MHCテトラマーが反応する系が構築できるのではないかと考えた。 次に、hTERTに対するTCRα鎖とβ鎖のCDRに変異を導入したTCR遺伝子ライブラリーを作成した。この遺伝子ライブラリーを293T-CD3細胞に導入したところ、野生株に比べてhTERTに反応性のよいものが含まれていることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TCRの評価用の細胞の構築するため、CD3のサブユニットを2A-peptideで繋げたCD3とCD8を、レトロウイルス、及び、ウイルスレンチウイルスを用いて、293T細胞に導入した。導入した遺伝子が多いためか、目的の遺伝子の発現が低く負荷の少ない細胞が増えるため、安定的に発現させるには、CD3とCD8 遺伝子導入の方法を改善する必要があった。そのため、導入細胞内でホストゲノム DNA へ取込まれずに、安定的に複製・維持され、目的遺伝子を長期間発現させることが可能な episomal型タンパク質発現ベクターpEB Multivectorなどを使用するなど、様々な改良を試みて、安定的に細胞上に発現させるための条件を構築した。 hTERTに対するTCRのα鎖とβ鎖のCDRは、それぞれ3つあり、それらのCDRに、ランダムに変異を導入できるプライマーを設計した。PCR法によりに増幅し、pcDNA3ベクターに導入して、TCR遺伝子ライブラリーを作成した。この遺伝子ライブラリーを293T-CD3細胞に導入したところ、フローサイトメトリー法にて、野生株に比べてhTERTに反応性のよいものが含まれていることが確認できたことから、このライブラリーに、高親和性のTCRが含まれている事が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
作成したhTERT TCRライブラリーより、高親和性の遺伝子のクローニングを行い、それぞれのクローンの特徴を検討する。また、得られた高親和性のTCRから、2次ライブラリーを構築し、KD値が高いTCRを取得する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2018年4月より愛知県がんセンター研究所から名古屋市立大学医学研究科地域医療教育学教室に異動した為、計画していた一部実験が執り行えず、試薬を購入しなかったため。
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