研究実績の概要 |
本申請研究は、難治性固形癌に対する多剤化学療法や分子標的治療の問題点である『腫瘍細胞の抗癌剤耐性能獲得と再発と転移促進』を解決すべく、腫瘍マクロファージ(Tumor-associated macrophages: TAMs)が『腫瘍細胞の幹細胞様特性獲得とそれに伴う発癌と転移活性促進』を誘導する分子機序の解明を行い、現在の臨床で実施されている難治性固形癌に対する治療効果の劇的な改善に向けた基礎的知見を得ることを目的とした。 平成30年度において、Tim-3陽性TAMsがヒト腫瘍細胞に幹細胞様特性を誘導する分子機序を解明するため、ヒト腫瘍細胞株を移植し作製した腫瘍モデルマウスの腫瘍組織から採取したTim-3陽性およびTim-3陰性TAMsとヒト腫瘍細胞を共培養して、腫瘍細胞での幹細胞マーカー(CD133, CD44, EpCAM, ALDH1, Lgr-5, Sca-1, ABCG2)およびTim-3の発現について調べたところ、腫瘍細胞集団の約10%において、幹細胞マーカーおよびTim-3の発現が認められ、Tim-3と幹細胞マーカーを発現する腫瘍細胞を免疫不全マウス(NOD/Scidマウス)に皮下移植したところ、腫瘍形成能が高いことが明らかとなった。さらに、腫瘍細胞の幹細胞様特性を誘起するTAMs由来の責任因子の解析を行ったところ、いくつかの候補因子を検出することができ、これらの候補因子に対するsiRNAを導入したTAMsは、腫瘍細胞に対して、幹細胞様特性を誘起することが出来ないことが明らかとなった。平成31年度以降は、これらの責任因子の詳細な検討を行う予定である。
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