研究課題/領域番号 |
18K07291
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
垣内 知子 (藤幸知子) 東京大学, 生産技術研究所, 主任研究員 (50610630)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 麻疹ウイルス / 腫瘍溶解性ウイルス / nectin-4 / 免疫応答 / 免疫誘導性細胞死 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、癌治療用組換え麻疹ウイルスrMV-SLAMblindの感染後に癌細胞に見られる細胞死の様式とその後に誘導される免疫応答を明らかにすることである。これまでに、免疫正常マウスの担癌モデルを用いた解析により、腫瘍溶解性組換え麻疹ウイルスによるin vitroでの細胞殺傷能が同程度にも関わらず、in vivoでの抗腫瘍効果および引き起こされる免疫応答が異なる細胞株が存在することを見出してきた。本年度はこれらの細胞株間でのウイルスに対する応答性の違いを調べるため、ウイルス感染後に発現誘導される遺伝子群の解析を行った。その結果、抗腫瘍効果が顕著な2株とそうでない2株間で特定の遺伝子群の発現誘導レベルが異なることを見出した。 次に、マウスの腫瘍細胞株間で観察された現象の違いが他の動物種の細胞株でも共通して見られるかを検討した。マウス以外の動物種に由来する癌細胞株の抗腫瘍効果の検討には免疫正常マウスを使用することはできないが、免疫不全マウスでもT細胞以外の免疫細胞が残っているnudeマウスを用いることで一部の免疫応答を解析することは可能である。Nudeマウスを用いた異種移植モデルにおいて治療効果が顕著に見られる細胞株を見出したため、その細胞株をnudeマウスに移植し、rMV-SLAMblind投与後の遺伝子発現誘導パターンを解析した。その結果、免疫正常マウス担癌モデルにおいて抗腫瘍効果が顕著に見られた腫瘍細胞株群に対する治療時と共通して発現誘導された遺伝子もあれば、共通しない遺伝子もあった。rMV-SLAMblind投与後の応答性が動物種または腫瘍の性質によって異なる可能性について、今後より詳細な解析が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
rMV-SLAMblind投与後の抗腫瘍効果と免疫応答性に関する細胞株間での違いについて遺伝子発現レベルでの解析を進め、手がかりとなる遺伝子群も同定できた。したがって、おおむね順調に進展していると考えられる。一方、免疫誘導性細胞死の指標としてよく知られているマーカーによる細胞死様式の特定には成功しておらず、検出系の検討を続けるとともに、他の細胞死様式の解析も必要と考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
(1) rMV-SLAMblind投与後に細胞株間で発現誘導レベルが異なる遺伝子に着目し、本ウイルス療法によって誘導される免疫応答の詳細な解析を進める。また、実際に本ウイルス療法の対象となるヒトやイヌの腫瘍細胞株でも解析を行う。 (2)本ウイルス療法による細胞死機構について、様々な腫瘍細胞株を用いて解析を進める。免疫誘導性細胞死を始めとする様々な細胞死様式のマーカー分子を解析し、その様式を決定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属研究室の移転に伴って本研究の遂行に必要な実験機器一式が使用出来ない期間が発生したため、研究計画に遅延が生じた。次年度使用分は研究計画に沿って使用する。
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