研究課題/領域番号 |
18K07292
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
田中 ゆきえ 東京医科歯科大学, 統合研究機構, 助教 (10814197)
|
研究分担者 |
小林 誠一郎 東京大学, 医科学研究所, 助教 (70376622) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | HTLV-1 Tax / ステムセルメモリーT細胞 |
研究実績の概要 |
本研究はTax-CTLのステムセルメモリーT細胞 (TSCM)の解析を目的としている。これまでに1)キャリアTax-CTLは常にT Effector Memory (TEM)優位であるが、HLA-A24陽性の場合、TCRβ鎖にPDRという3アミノ酸が連続した特徴的配列を持つTax-CTLメモリー細胞(PDR+Tax-CTL)がドミナントクローンである例が多いこと、2)希少だがTax-CTLのTSCMは末梢血中に存在し、これらが非常に強いTax抗原への反応ポテンシャルを持つこと、3)様々なEMドミナントクローンがTSCMを源とするが、特にPDR+Tax-CTLはTSCMから優先的に分化増殖することを明らかにした。 そこで本年度はPDR+Tax-CTLの性状解析を目的とし、Tax-CTLが比較的多く回収できるHAM患者4例の約20,000個のTax-CTLを用いて、TCR鎖(クローン識別)と259遺伝子の発現を同時に解析するシングルセルRNAseqを行った。Seurat解析の結果、Tax-CTLは殆どがTEMの単一集団であるためモノクラスターを形成しやすい中、PDR+Tax-CTLは分散しながらも二つの特定クラスターに寄せ集まり、これらのクラスターでTCRαβ遺伝子とKLRB1を含むいくつかの活性化関連遺伝子が強く発現していることが判明した。この結果は、キャリア体内で感染細胞が発現するTax抗原に対してPDR+Tax-CTLのTSCMが効率よく反応し、分化増殖が促進、最終的にTax-CTLのドミナントメモリーT細胞集団となり、ウイルス増殖を抑制していることを示唆している。今後さらに、Tax-CTLのアフィニティー解析やシングルセル解析をすすめ、最終的にTax-CTLのTSCMの臨床応用を目指した拡大培養条件の検討を行う。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度はPDR+Tax-CTLのTSCMの優先的な分化増殖の仕組みを解明するためのシングルセルRNAseq解析が進んだ。TSCMに由来するTax-CTLクローンのTCRアフィニティー解析を予定していたが、T細胞クローンの樹立が本年度も上手くいかなかった。収まらないCOVID-19の影響により、大学主導のCOVID-19関連業務のエフォートが上がり、本研究のエフォートが下がってしまった。本研究に対するCOVID-19の影響は緩くなったが未だ続いており、検体収集の鈍化はあまり改善していない。
|
今後の研究の推進方策 |
キャリア検体を用いたTax-CTLのアフィニティー解析やシングルセル解析を進める。Tax-CTLの遺伝子発現プロファイリングを応用したSCMからTax-CTL量産を可能にする培養系の条件を探る。引き続きのTSCM由来のTax-CTLのクローン樹立とその性状解析に努める。来年度が最終年であるため、論文化に向けたデータ収集を可能な限り急ぎ、結果がまとまり次第論文投稿を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
収まらないCOVID-19の影響で、大学主導のCOVID-19関連業務のエフォートが上がり、本研究のエフォートが下がった。結果として、研究の遅れにより予定通りに執行できなかった今年度の金額分を、次年度に繰り越したため。次年度はsc-RNAseq、レパトア解析等で高額な試薬類の購入が多いことと、最終年度であることから出来るだけ論文化等の費用に充てる予定である。
|