成人T細胞性白血病(ATL)はHTLV-Iウイルス感染後に数十年間のキャリア期を経て発症する極めて予後不良の造血器悪性腫瘍である。またATLの発症を防ぐ宿主免疫で最も重要なのがHTLV-I Tax特異的CTL(Tax-CTL)であり、このメモリーT細胞がHTLV-1感染症におけるウイルス制御の中心と考えられる。本研究では、HTLV-1 Tax-CTLのステムセルメモリーT細胞 (TSCM)の解析とその治療応用の可能性を探るための解析を行った。これまでに、1)HTLV-1キャリア末梢血中のTax-CTLは常にT Effector Memory (TEM)優位であるが、HLA-A24陽性の場合、TCRβ鎖にP-D-Rという3アミノ酸が連続した特徴的配列を持つTax-CTLメモリー細胞(PDR+Tax-CTL)がドミナントクローンである例が多いこと、2)HTLV-1キャリア末梢血中には希少ながらもTax-CTLのTSCMが存在し、これらがTax抗原に対する非常に強い反応ポテンシャルを持つこと、3)様々なTEM分画にあるTax-CTLドミナントクローンがTSCMを源とするが、特にPDR+Tax-CTLはTax-CTLのTSCMから優先的に分化増殖することを明らかにした。HTLV-1キャリアが有するPDR+Tax-CTLのTSCMがキャリア体内で効率よく反応し、分化増殖が促進されることで、長期間に渡って最終的にTax-CTLのドミナントメモリーT細胞集団となり得ることを示唆する結果が得られた。現在論文の投稿準備中であるが、先に、この研究実績は第12回日本血液疾患免疫療法学会学術集会で発表を行った。
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