研究実績の概要 |
研究の目的は、急性白血病の抗がん薬耐性分子病態を解明しその克服法を確立することである。過去二年で、白血病のkey drugシタラビン、クロファラビンについて、使用した耐性細胞3種において、薬剤トランスポーターは関連がなく、細胞内薬剤活性化酵素dCK, dGK低下が認められ、細胞内薬剤活性化体生成低下を見出した。さらに抗アポトーシスタンパクBcl-2, Mcl-1の過剰発現とそれぞれの阻害薬の効果を定量した。最終年度は薬剤耐性分子病態のさらなる解明とより強力な抗アポトーシス解除について応用的検討を加えた。 薬剤のがん細胞内活性化経路を中心に網羅的に解析を行った。マイクロアレイ法により網羅的遺伝子発現レベルを検討した。上記検討済み以外の薬剤トランスポーター(hENT3, hCNT1,2)にも異常発現は認められなかった。さらに薬剤不活化酵素(CDA, cNT-II)や薬剤排泄ポンプ(PGP, MRP)の発現レベルにも異常は見られなかった。また、DNA修復(BRCA, ATM, ATR, PARP, MLH1, MSH2, ERCC1, XPG, APE)や細胞周期チェックポイント(CDK4/6, cyclin)に関わる因子の異常も見られなかった。以上から今回検討した3種類の耐性細胞では細胞内活性化体の低下と抗アポトーシス増強が耐性の主要因であると結論付けた。 過去二年の検討で阻害薬ベネトクラクスとアルボシディブの効果を見出したが、その効果はやや限定的であった。特に、ベネトクラクスはBcl-2発現増強とともに効果が減弱すること、アルボシディブはシタラビンとの同時投与で相乗しないことが問題となった。今年度は、二剤併用によるBcl-2, Mcl-1同時阻害を検討し、その効果は相加的であるが相乗的でないことを見出した。また、脱メチル化薬を追加併用し、エピジェネティック修復によりMcl-1が低下することの端緒を得た。いずれも今後の発展的課題となった。
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