研究課題
赤血球膜蛋白であるband3の大腸癌での異所性発現による病態への影響を患者50名、健常者26名を対象として解析を行った。Band3蛋白は90%以上の大腸癌組織で異所性に発現していた。また。大腸癌患者では便潜血陽性と陰性の患者で正球性~大球性貧血 が観察され、直接クームステストでは陽性率20%とこれまでの報告より極めて高く、フローサイトメトリーでも赤血球膜上のIgGが健常者より増加していたことから、膜上のIgGの増加が赤血球寿命の短縮をきたす自己免疫性溶血性貧血と同様の血管外溶血の機序が、がんにおける出血以外の2次性貧血の一因となっている可能性が示された。Band3蛋白に対する抗体の割合が大腸癌細胞の存在により増加することは患者検体およびマウス大腸癌細胞株colon-26の移植実験で免疫沈降法により確認した。Band3には赤血球に発現しているfull lengthのものと、腎尿細管で発現しているshort formがあるが、short formのみを発現するマウス白血病細胞株WEHI3を移植するとshort formに対する抗体が誘導されることを免疫沈降法で確認でき、立体構造などの違いにより抗原性が異なる可能性が示された。ヒト大腸癌細胞株HCT116およびSW480では、通常培養条件下ではshort formのものが優位に発現しているが、低酸素状態を模倣する塩化コバルトによる刺激と、HIF-1α下流のAMPKのリン酸化の違いによりfull lengthとの発現のバランスが制御されていることを確認した。また、他の赤血球関連遺伝子が発現するかを確認するため白血病細胞株K562の赤血球への分化を誘導する酪酸ナトリウムを用いて大腸癌細胞株を刺激したところ、ヘモグロビンHBA2遺伝子が高発現することを確認でき、外胚葉系細胞から中胚葉系細胞へ直接リプログラミング起こっていると考えられた。
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