研究課題/領域番号 |
18K07298
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
岡野 圭一 香川大学, 医学部附属病院, 准教授 (20314916)
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研究分担者 |
曽我 朋義 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 教授 (60338217)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 膵癌 / 術前治療 / メタボローム解析 / 遺伝子解析 / コリン代謝 / 治療抵抗性 / 予後予測 / CE-MS |
研究実績の概要 |
膵癌の術前治療抵抗性の病態を代謝という面よりアプローチし、メタボローム解析と遺伝子解析により解明する目的で研究を行ってきた。外科切除標本から凍結保存した腫瘍と非腫瘍性膵臓組織を用いてキャピラリー電気泳動質量分析(CE-MS)、マイクロアレイにより網羅的に解析した。 術前治療(NACRT)の有無、NACRT症例ではEVANS分類により有効群と無効群に分類して比較検討を行った。有効例と無効例に関しては術前短期間化学放射線療法の第Ⅰ/Ⅱ相試験で切除した症例のプレパラートを病理医と再評価して組織学的治療効果判定(Evans分類)でGradeⅠ(癌の膵体残存量が90%以上) /GradeⅡa (10-50%)/Ⅱb (51-90%)/Ⅲ(10%未満)/Ⅳ(0%)にグループ分けを行った。 CE-MSにより定量化された500を超えるイオン性代謝物のうち、分析可能な90の代謝物を検出した。 NACRTグループとコントロールグループの間で22の腫瘍代謝産物に有意差を認めた。 NACRTの有効群と無効群の間で、9つの代謝産物に有意差があった。興味深い事にこれらの9つの代謝物のうち、ある一つの代謝産物のみがNACRTグループの無再発生存と関連している事が明らかとなった。マイクロアレイにより、その代謝産物の合成、リン酸化、輸送に関する遺伝子を解析して、その制御に強く関与している遺伝子も確認できた。その詳細は論文報告する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
慶應義塾大学先端生命科学研究所との共同研究も予定通り順調に進み、想定以上の成果が得られている。 CE-MSによるメタボローム解析を用いて膵がん代謝産物の変化を網羅的に測定した。凍結組織サンプルならびにパラフィン包埋切片を用いて遺伝子変異をマイクロアレイで評価した。 これらの成果をもとに予後・RECIST分類・EVANS分類との関連性を検討し、術前治療に特有な予後を規定する代謝産物とそのメカニズムを規定する遺伝子を特定できた。
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今後の研究の推進方策 |
現在、研究成果を英語論文にまとめている。また共同研究者とともにデータの解釈や論文の投稿先、今後の展開についてメールなどで議論を継続している。今後は投稿雑誌査読者の意見も参考に必要であれば追加実験を検討する。 また、同時に国内・国際学会で報告し、国内外の研究者たちと議論を深めていく予定であるが、COVID-19の影響が危惧されている。
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次年度使用額が生じた理由 |
マイクロアレイ外部委託費用が当該年度の支出となった。検体数調整や検体抽出・準備過程を地施設で行い予算使用額を可能な限り抑えた。次年度使用額はデータ解析・論文作成時の英文校正・学会発表などに用いる予定である。
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