当研究室で樹立したpolo-like kinase (PLK) 阻害薬耐性細胞およびaurora kinase (AURK) 阻害薬耐性細胞では、AKT3の活性化が起こっていた。AKT阻害薬は、ヒト卵巣がん細胞のM期におけるmultipolar spindleおよび染色体のmisalignmentの出現頻度を増大させた。AKT3活性型変異体の安定発現細胞では、multipolar spindleの出現頻度は低かった。以上より、AKTが染色体を正常に分配する方向に働いていることが示された。 当研究室で樹立したBromodomain and extra-terminal (BET) 阻害薬耐性細胞では、Traf2 and NCK-interacting kinase (TNIK)、cyclin D1、cyclin E1の発現が上昇していた。luciferase assayなどにより、TNIKがcyclin E1のmRNA発現を上昇させ、これが耐性と関与していることが示された。また、BET阻害薬耐性細胞はolaparibなどのPARP阻害薬に耐性を示した。この耐性にBRCA1、Rad51の関与が示された。 当研究室で樹立した116/slug細胞は、間葉系細胞の性質を持ち、またHoechst 33342で染色されないSP(+)細胞を含んでいる。BET阻害薬は、116/slug細胞のSP(+)細胞をSP(-)細胞に転換させた。また、116/slug細胞は、glutathione peroxidase 4 (GPX4) 阻害薬に抵抗性であった。 抗がん剤・がん分子標的治療薬の耐性の原因となるトランスポーターであるP-gpを発現するヒト大腸がん細胞SW620-14-4に、inositol polyphosphateの脱リン酸化酵素であるMINPP1のsiRNA、shRNAを導入すると、細胞膜上のP-gpの発現が増大した。また、MINPP1をノックダウンした細胞では、JNK1 cascadeのtarget遺伝子の発現が低下した。JNK1阻害薬は、P-gpの発現を上昇させた。以上より、MINPP1がJNK cascadeを介してP-gpの発現を制御していることが示された。
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