本研究は、がん生体外ウイルス診断薬「テロメスキャンOBP-401」を用いて、血中循環腫瘍細胞(Circulating Tumor Cell : CTC)をハイスループットかつ高感度に検出可能な測定システムを開発し、がん早期診断や治療奏功予測への応用を目指している。2019年度には、非小細胞肺がん患者の3mLの血液から生きたCTCの高効率な濃縮方法を開発し、特許出願を行った(特願2019-130412)。本システムによって、早期肺がん症例(Stage 0~)からも85%以上の高感度検出に成功している。2020年度には、非小細胞肺がん患者の抗癌剤及び免疫チェックポイント阻害剤治療前後における、CTC数の推移のモニタリングを開始した。また、悪性度が高く従来法では検出が困難であった上皮間葉転換(epithelial mesenchymal transition:EMT)を起こしたCTC(EMT-CTC)の検出のためにEMTマーカーであるVimentinや、免疫チェックポイント阻害剤の奏功に関連するPD-L1の免疫染色を行った。2020年2月より前向き臨床試験の患者登録を開始した。2021年度も引き続き患者登録とCTC測定を継続し、2021年12月に計100例の患者登録を終了した(うち1例は同意撤回により除外)。解析の結果、PD-L1陽性のCTC数の推移は、投与2コース後の採血のタイミングでRECIST判定との間に有意な相関がみられた。Vimentin陽性のEMT-CTCが検出された症例数は少ないが、RECIST PD症例の一部ではEMT-CTC数が増加することが確認された。現在さらに解析を進めるとともに、原著論文投稿に向けて論文執筆中である。
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