研究実績の概要 |
オーロラBは、多くのがん細胞種で過剰発現しており、ゲノム不安定性を生み出す。それゆえ、オーロラB阻害剤は抗がん性を持ち、抗がん剤として精力的に研 究開発が行われている。我々は、これまでに培養細胞を用いた解析からRNPS1が、オーロラB mRNAの第5エキソンの特定の領域に結合し、正確なスプライシング を保証していることを明らかにしていた。実際、RNPS1の発現阻害を行うと、オーロラB mRNAの正確なスプライシングが阻害され、タンパク質量が著しく減少す る。そこで、この領域に対するアンチセンスオリゴヌクレオチドを細胞内に導入することで、オーロラB mRNAへのRNPS1の結合を阻害し、特異的に正確なスプラ イシングを阻害する事ができるのではないかと考えた。 3年間の研究期間を通して、RNPS1のオーロラB mRNAへの結合を阻害し、正確なスプライシングを阻害するアンチセンスオリゴヌクレオチドを創出する事に成功した。このアンチセンスオリゴヌクレオチドは実際、オーロラBのタンパク質レベルも低下させた。本研究では、さらにRNPS1によるオーロラB mRNAの正確なスプライシング制御の詳細なメカニズムを明らかにする事にも成功した。RNPS1は、PININ,SAP18と共にPSAPと呼ばれる複合体を形成するが、このPSAP構成因子のノックダウンによっても異常スプライシングが誘導された。つまり、PSAP複合体がオーロラB mRNAの正確なスプライシングに必須である事を示す。さらに、本研究では、PSAPが我々が同定したオーロラBの第5エキソンの特定領域に結合している事も明らかにした。PSAP複合体は、機能未知の複合体であり、新たな機能の発見に繋がると期待しており、さらに研究を続けていく予定である。
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