研究課題/領域番号 |
18K07305
|
研究機関 | 兵庫医療大学 |
研究代表者 |
田中 稔之 兵庫医療大学, 薬学部, 教授 (30217054)
|
研究分担者 |
大野 喜也 兵庫医療大学, 薬学部, 講師 (40509155)
岡村 春樹 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (60111043) [辞退]
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 癌免疫治療 / IL-18 / 免疫チェックポイント / NK細胞 / バイオマーカー |
研究実績の概要 |
免疫チェックポイント阻害薬は担癌宿主のT細胞を抑制状態から解放し、強い抗腫瘍効果を発揮する。しかし、半数以上の患者には未だ十分な腫瘍縮小効果が見られない。また、克服すべき副作用として免疫関連有害事象が残されている。研究代表者らは、自然免疫を制御するIL-18が免疫チェックポイント阻害薬の抗腫 瘍効果を増強するとともに自己組織の保護作用を発揮することを見出した。 本研究は、【1】IL-18による免疫チェックポイント阻害薬の抗腫瘍効果の増強機構の解明、【2】IL-18の併用治療プロトコルの至適化と治療効果を予測するバイオマーカーの探索および【3】IL-18のミトコンドリア機能保持による自己免疫性組織傷害に対する保護作用の解明などを通じて、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果を増強するIL-18を癌免疫治療へ応用することを目的としている。 2019年度はIL-18による免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の抗腫瘍効果の増強作用の発現におけるNK細胞の役割を解析した。IL-18とICIの併用治療において、治療早期に出現する活性化NK細胞が必須の役割を果している。そこで、IL-18投与したマウスから採取した活性化NK細胞をマウスに投与し、投与部位へのI型樹状細胞の集積を解析した。その結果、活性化NK細胞は、投与局所へI型樹状細胞を直接動員できる能力を持つことが示された。これは、活性化NK細胞がXCL1などのI型樹状細胞動員に関わるケモカインを発現することと一致する。また、マウス大腸癌細胞CT26を用いた腹腔播種モデルにおいて、活性化NK細胞はIL-18によるICIの抗腫瘍効果の増強作用を少なくとも部分的に代替できることも示された。今後、IL-18によるICIの抗腫瘍効果増強作用の発現における活性化NK細胞の役割をさらに追究する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度の成果を踏まえ、2019年度はIL-18による免疫チェックポイント阻害剤の抗腫瘍効果の増強作用における活性化NK細胞の役割を解析した。その結果、IL-18で活性化したNK細胞がI型樹状細胞を直接局所に動員できること、および活性化NK細胞がIL-18による治療効果の増強作用を少なくとも部分的に代替できることを明らかにできた。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度はIL-18による免疫チェックポイント阻害剤の抗腫瘍効果の増強作用発現における活性化NK細胞の役割に焦点を絞り解析した。 今後はこの活性化NK細胞を起点として、IL-18による免疫チェックポイント阻害剤の抗腫瘍作用の増強機構の詳細を追求し、IL-18による自然免疫と獲得免疫の連携を通じた免疫チェックポイント阻害剤の抗腫瘍効果の増強機構を明らかにしたい。また、IL-18による治療効果を予測するバイオマーカーやIL-18による正常自己組織の保護機構についても解析を進めたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2019年度はIL-18による免疫チェックポイント阻害剤の抗腫瘍効果の増強における活性化NK細胞の役割に焦点を絞って解析を行った。当初計画に比し、免疫学的試薬および実験動物の個体数を少なく押さえることができたため、次年度使用額が生じた。 2020年度は、本研究の最終年度であり、活性化NK細胞を起点とする抗腫瘍免疫効果の増強機構の解析と成果発表にむけて効率的に予算を執行する計画である。
|