研究実績の概要 |
われわれは、以前より5-アミノレブリン酸(ALA)の放射線増感作用について悪性グリオーマ細胞株を用いてその効果をin vitroおよびin vivoで証明し、放射線増感作用は、5-ALAから誘導されるプロトポルフィリンIX(PpIX)が細胞内に蓄積することにより、その効果が得られることを同定した。現在、悪性脳腫瘍の一つである脳原発悪性リンパ腫に対する5-ALA併用放射線照射への応用に向けての基礎研究を行っている。放射線治療を考えた際に、放射線治療抵抗性と低酸素領域との関連が以前より指摘されている。いかに低酸素領域の治療効果を高めることが重要である。今回は、悪性脳腫瘍細胞株における、低酸素下での5-ALAから誘導されるPpIX蓄積の評価を行った。過去の文献を参照に、培養条件を通常酸素濃度、5%酸素濃度および1%酸素濃度を設定した。 悪性リンパ腫細胞株(CTB1, Raji, HKBML, MC116)および悪性グリオーマ細胞株(9L, U251)を用いて、低酸素下(酸素濃度5%, 1%)での24時間培養し、低酸素環境に誘導されるHIF-1をウエスタンブロッティングで評価を行い、低酸素の状態において、HIF-1の共発現が確認された。さらに、同様な低酸素条件において、5-ALAで培養後に、細胞株内に蓄積されたPpIXをフローサイトメーターで定量した。5-ALA培養後の悪性脳腫瘍細胞株において、通常酸素濃度と比較し、低酸素条件ではPpIX蓄積量が低下していた。しかし、PpIXは、5-ALA非投与群と比較し有意に蓄積していた。このことから、悪性脳腫瘍細胞株においては、5-ALAから変換されるPpIXは、その量は減少するものの、明らかに細胞内部に蓄積されているといえる。
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