研究課題/領域番号 |
18K07308
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
右田 敏郎 公益財団法人がん研究会, がん化学療法センター 分子生物治療研究部, 研究員 (20462236)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | がん / 慢性腎不全 / 尿毒症物質 |
研究実績の概要 |
尿毒症物質は腎不全により体に蓄積し、生体に様々な有害事象を引き起こす物質の総称である。本研究の目的は尿毒症物質の中から、がん細胞の増殖や転移を直接抑制する働きを持った物質を同定することにある。人工透析を受けている患者血清のがん抑制効果をin vitro、in vivo実験によって実証する。さらに、患者血清のメタボローム解析と既存のデータベースより抗がん効果を有する尿毒症物質の候補を絞っていく。 本年度は、臨床検体を用いる実験のため倫理審査委員会の承認を得る作業を行った。2018年6月15日に研究場所であるがん研究会のCancer boardに研究計画書、患者同意書、撤回書などを提出した。Cancer boardでの修正と承認後、IRB、SRBの審査を順次経て、最終的に2018年11月26日、がん研究会により承認された。審査中にICR臨床研究入門の受講、修了が必要との指摘があり、e-learningにより2018年8月7日に修了した。がん研究会の倫理審査委員会の承認後に、共同研究先の病院の倫理審査委員会に研究計画書などを2018年12月13日に提出し、2019年1月11日に承認された。現在、基準に合った患者検体を待機中であるが、まだ入手できていない。 実験では腎臓がんを含むヒトがん細胞株をいくつか通常ウシ胎児血清にて培養し、安定的に継代できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究が遅れている最大の理由は本年度は予想外に倫理審査に時間を費やしたことが挙げられる。また、倫理審査が承認されても、共同研究先の人事異動があり、研究の進め方についてもう一度説明が必要になるなど、実際の研究開始までに相当時間がかかった。 倫理審査委員会は構成メンバーの異なる3つの委員会の承認を段階的に踏まなければならないが、委員会毎に計画書に対する修正要求が異なり、二転三転した結果、最初の計画書の案に戻り最終承認されるということもあった。臨床研究に関する倫理審査の法改正があり、個人情報の管理が強化された一方、自由で臨機応変な研究が阻害される可能性があると感じた。 また、研究計画書の手順に拘り、臨床検体を使わなくて済む実験系を計画しなかったことも遅れた原因と考えられた。臨床検体で結果が出ない場合は研究仮説の否定に繋がる可能性もあるため、実験手順に拘ったが、計画書に記載の実験の順番を変更して臨床検体を使わない実験を先に始めても良かったかもしれない。
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今後の研究の推進方策 |
共同研究先の病院から計画書の基準にあった患者を待機し、血清検体を用いた実験を早く開始したい。臨床検体を効率的に入手するために、共同研究先を増やして、研究計画書の一部修正を倫理審査委員会に諮ることも検討する。 臨床検体を入手するまでの間に、正常ヒト血清入りの培地でがん細胞株を培養し、通常のウシ胎児血清入りの培地の場合と増殖能を比較してみる。 文献などから、公表されている尿毒症性物質のうち、可能性のある物質を購入し、がん細胞の増殖能に与える影響を調べる。 In vivo実験として、ヌードマウスに0.25%アデニン含有飼料(AIN-93G準拠)を3週間与えて慢性腎不全のモデルマウスを作製する。皮下にヒトがん細胞株を移植し、増殖能を調べる。
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