研究課題
12万個の化合物ライブラリーより、in silico dockingプログラム(AutoDock)やADMEスコア(StarDrop6.4, Optibrum社)を用いて化合物の1次スクリーニングを行った。その内、52化合物について、PD-1/PD-L1特異的ELISA系での2次スクリーニングを行ったところ、対照化合物として使用しているブリストルマイヤーズ社で開発中のPD-1/PD-L1結合阻害剤BMS-202よりも強いPD-1/PD-L1結合阻害活性を示す化合物を複数個同定した。さらに、PD-1/PD-L1結合阻害剤のin vivoでの薬効評価系としての有用性を確認するために、対照薬剤BMS-202について、抗PD-1抗体治療モデルとして報告(Clin Cancer Res, 23, 149, 2017)しているPD-L1陽性ヒトリンパ腫SCC-3細胞を移植したヒト化MHCダブルノックアウトNOGマウス系において評価を行った。BMS-202は腫瘍の増殖抑制効果を示したが、抗腫瘍効果のメカニズムは、免疫学的な寄与は少なく直接的な抗細胞活性によるものと想定された。この結果は、これまでに報告されたBMS-202構造類似体の特性を示唆していた(Oncotarget, 8, 72167, 2017)。以上よりPD-L1陽性ヒトリンパ腫SCC-3細胞を移植したヒト化NOGマウスモデルは、PD-1/PD-L1結合阻害剤のin vivo薬効評価系としても有用であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当研究室にて開発したPD-1/PD-L1特異的ELISA系での2次スクリーニングにおいて、対照薬BMS-202よりも強いPD-1/PD-L1結合阻害活性を示す化合物を複数個同定した。見出された化合物について、特許の申請状況や周辺化合物の調査を進めるとともに、今後の合成展開等について検討を進めている。そこで、今後のPD-1/PD-L1結合阻害剤のin vivoでの評価を進めるにあたり、対照薬剤BMS-202の薬効プロファイルを検討するために抗PD-1抗体治療モデルとして報告しているヒト化MHCダブルノックアウトNOGマウス系において評価を行った。BMS-202は腫瘍の増殖抑制効果を示したが、そのメカニズムは、直接的な抗細胞活性によるものと想定され、免疫的な寄与は少なかった。以上より強いPD-1/PD-L1結合阻害活性を示すとともに、直接的な細胞傷害活性が弱い化合物を選択する必要性があると考えられた。
見出された直接的な細胞傷害活性が弱い化合物の細胞レベルにおけるPD-1/PD-L1結合阻害活性について、現在開発が進められているBMS-202以外のPD-1/PD-L1結合阻害剤や抗PD-1抗体等を対照薬とした高次評価を進める。また、先行リード化合物の周辺化合物の合成や大量合成が容易であり、かつ経口投与において生体内移行性が優れた新規候補化合物を選択する。その中で選択された新規候補化合物のin vivoでの有用性を明らかにするためにPD-L1陽性ヒトリンパ腫SCC-3細胞を移植したヒト化NOGマウス系を利用して、化合物にて治療を行った腫瘍の解析(腫瘍内浸潤免疫細胞のフローサイトメトリー, 定量PCR解析等)を行う。さらに、新規化合物の知財化について検討を行い、特許化の可能性のあるものは特許出願を行う。
当予算によりドラッグデザイン用コンピューターの導入を予定していたが、別予算により導入したために次年度使用額が生じた。今後はドラッグデザイン用コンピューターの導入予算として使用する見込みである。
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