研究課題
本研究は種類を問わず「がん」に高発現しているLAT1を分子標的とする事で、がん特異的に治療を行う可能性を検討するものである。LAT1の基質は低分子のアミノ酸であるため、免疫機構によって排除される事はない。また、高エネルギーα線はいかなる薬物よりも確実にがん細胞を殺すことが出来る。α線はβ線に比べて生体内での飛程が短く、適切にデリバリーされることで周囲の正常組織への副作用はほぼゼロになる。また、短寿命α線核種は、がんを攻撃した後に壊変して安定同位体となるため、内部被曝による障害の心配はない。また、本研究に先立ち、211Atの体内からのクリアランスが良好であることも確認している。α線による細胞障害性は既知であり、LAT1の分子標的としての有用性は既に確認されている。研究期間内に標識化合物による副作用の程度、全身クリアランス、そして抗腫瘍効果を発揮できる最低投与量、最適投与スケジュールを決定し、LAT1の分子標的としての有用性の確認及び標識化合物の新規抗腫瘍薬としての可能性の解明が本研究の最大の目標である。H30年度は、LAT1を標的とする短寿命α線による核医学治療の実用化を目指し、次の検討を行った。① LAT1高親和性化合物αメチルチロシンへの短寿命α線核種(211At)の標識法の最適化、② in vitroにおけるがん特異性と安定性の確認、③ 標識化合物を用いた、モデル動物(正常・担がん)における挙動の確認、④ 標識化合物を用いた、抗腫瘍効果の確認。その結果、①簡便な標識法を確立し、②in vivo, in vitroでの化合物の特異性と安定性を確認することができた。また、③正常組織よりもがん組織に親和性が高いことを確認し、さらに④ゼノグラフトモデルにおいて、抗腫瘍効果を確認することができた。
2: おおむね順調に進展している
学会発表も複数回行うとともに、関連研究に関して、論文が1報受理された。また、関連特許に関しては2019年2月にPCT出願を完了した。さらに、将来の創薬の実用化に向けてのPMDA総合相談も実施して、着実に研究は進展していると考えられるため。
平成31年度は、開発化合物の多様なモデルにおける抗腫瘍効果および副作用の検討を行う。このことにより、研究期間内に標識化合物による副作用の程度、全身クリアランス、そして抗腫瘍効果を発揮できる最低投与量、最適投与スケジュールを決定し、LAT1の分子標的としての有用性の確認及び標識化合物の新規抗腫瘍薬としての可能性の解明を行う。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (10件) 備考 (3件) 産業財産権 (1件) (うち外国 1件)
Journal of Nuclear Medicine
巻: - ページ: -
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https://www.rcnp.osaka-u.ac.jp/~qiss/overview2.html
http://www.irs.osaka-u.ac.jp/wp-content/uploads/2019/04/press_releasee_190327.pdf
http://www.irs.osaka-u.ac.jp/project/