研究課題/領域番号 |
18K07323
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
兼田 加珠子 (中島加珠子) 大阪大学, 放射線科学基盤機構, 特任准教授(常勤) (00533209)
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研究分担者 |
白神 宜史 大阪大学, 放射線科学基盤機構, 特任准教授(常勤) (00560400)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 核医学治療 / アルファ線 / がん / アミノ酸トランスポーター / LAT1 / アスタチン211 |
研究実績の概要 |
本研究は種類を問わず「がん」に高発現しているLAT1を分子標的とする事で、がん特異的に治療を行う可能性を検討するものである。LAT1の基質は低分子のアミ ノ酸であるため、免疫機構によって排除される事はない。また、高エネルギーα線はいかなる薬物よりも確実にがん細胞を殺すことが出来る。α線はβ線に比べ て生体内での飛程が短く、適切にデリバリーされることで周囲の正常組織への副作用はほぼゼロになる。また、短寿命α線核種は、がんを攻撃した後に壊変して 安定同位体となるため、内部被曝による障害の心配はない。また、本研究に先立ち、211Atの体内からのクリアランスが良好であることも確認している。α線に よる細胞障害性は既知であり、LAT1の分子標的としての有用性は既に確認されている。研究期間内に標識化合物による副作用の程度、全身クリアランス、そして 抗腫瘍効果を発揮できる最低投与量、最適投与スケジュールを決定し、LAT1の分子標的としての有用性の確認及び標識化合物の新規抗腫瘍薬としての可能性の解 明が本研究の最大の目標である。 R2年度は、コロナ禍により若干の研究の遅れは生じたが、LAT1を標的とする短寿命α線による核医学治療の実用化を目指し、開発化合物の多様なモデルにおける抗腫瘍効果および副作用の検討を行った。標識化合物による明らかな副作用は認められず、迅速な全身クリアランスが確認された。そして抗腫瘍効果を発揮できる線量における抗腫瘍効果及びLAT1の分子標的としての有用性、標識化合物の新規抗腫瘍薬としての可能性を確認し、その成果をCancer Science誌に報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナ禍のため、学会発表はオンラインが多かったが、本研究課題に関する論文が1報及び関連論文が2報受理された。
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今後の研究の推進方策 |
R3年度に採択された新規研究課題において、さらなる発展・検証を行う。研究期間内での非臨床試験の実施を目標に検討を続ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、出席予定としていた学術総会が開催中止またはWeb開催となったため、旅費を使わなかった。また、所属組織における在宅勤務の奨励により、実験の進行に若干の遅れを生じた。さらに物流に影響が出たことにより、年度内に納品されない試薬が生じ、結果として年度内に完了できない実験が生じたことから、次年度使用額が生じた。 次年度は前年度に検証が不十分であった副作用に関する検討を実施し、内部被曝による遷延的な増血障害の有無を確認する。また、病理学的な異常の有無を評価することにより標識化合物の治療薬としての安全性の確認を行う。
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