研究課題
前年度までの検討でEUS-FNAの生検検体で腫瘍のIL-13Rα2の発現が評価でき、診断の極初期から治療効果や予後予測のバイオマーカーとして使用できる可能性が示された。EUS-FNAにて診断した新規膵癌患者 132例を対象とした検討ではIL-13Rα2高発現群において無増悪生存期間・全生存期間ともに有意に短かくなっていた。この結果はCancersに発表した手術検体におけるIL-13Rα2の発現が生命予後と逆相関することをサポートする結果であった。また化学療法の効果に関しては、治療後3か月での腫瘍増大率を検討したところ、低発現群より高発現群で有意に増大傾向にあった。また化学療法に影響を与える他の因子と化学療法耐性に関して多変量解析すると、IL-13Rα2高発現が最も有意な因子として示された。このことよりIL-13Rα2は主にGemcitabineをベースとする化学療法の治療抵抗性に関与していることが分かり、この研究結果をPancreas誌に投稿した。治療前にIL-13Rα2の発現を確認することは化学療法の効果を予測でき、さらにIL-13Rα2の発現を抑制することが化学療法の効果の改善につながる可能性がある。我々の動物実験の結果、緑茶ポリフェノールがIL-13Rα2の発現を抑制し、膵癌の転移を減少させることが分かっており、Gemcitabineを併用することにより化学療法の効果を高めて、更に予後が改善するかを現在検討中である。引き続きIL-13Rα2の発現を強く抑制するSmall moleculeの探索を継続している。緑茶ポリフェノールの膵癌に対する治療効果は上記データを含めて論文報告する予定である。本研究で得られた知見を含めて、日本膵臓学会編集の2022年度膵癌診療ガイドラインの作成にかかわっている。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
International Journal of Clinical Oncology
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10.1007/s10147-023-02317-x
Pancreas
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