研究課題/領域番号 |
18K07336
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
須田 健一 近畿大学, 医学部, 講師 (30631593)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 分子標的治療 / EGFR遺伝子変異 / 獲得耐性 / 上皮間葉転換 / 肺腺がん / CD44 |
研究実績の概要 |
本年度は、CD44 発現の有無が上皮間葉転換(EMT)および EGFR キナーゼ阻害剤(TKI)感受性に影響するかについて、in vitro の検討を施行した。CD44 を高発現する HCC4006 株(EGFR exon 19 欠失)において、CD44 ノックダウン株を樹立した。CD44 ノックダウン株も親株と同程度の EGFR-TKI 感受性を示したが、CD44 をノックダウンしておくことで、HCC4006 株より樹立した EGFR-TKI 耐性株が EMT をきたさないことを観察した。一方、CD44 低発現の HCC827 株(EGFR exon 19 欠失)について、CD44 を遺伝子導入し、CD44 過剰発現株を作成した。CD44 過剰発現株において E-カドヘリンの発現低下は認めなかったが、vimentin 発現の上昇を認めた。一方、EGFR-TKI 感受性は、CD44 過剰発現株でも変化しなかった。 これらのことより、EGFR 変異陽性肺腺がんにおいて、CD44 発現の有無は、EGFR-TKI 治療前の EMT 状態や、EGFR-TKI の感受性には影響を与えないと考えられた。これらの結果は、Suda K., et al. Molecular Cancer Therapeutics 誌(2018)に発表した論文の一部データとして使用した。 また、実臨床では第3世代 EGFR-TKI であるオシメルチニブが1次治療より用いられるようになり、1次治療でのオシメルチニブ耐性を克服する必要性が急務となった。このため、Ba/F3 細胞株を用いてオシメルチニブ獲得耐性株を樹立し、その耐性克服が可能な EGFR-TKI の探索も並行しておこなった。この研究の成果は、Nishino M. and Suda K., et al. Lung Cancer 誌(2018)に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
In vitro の実験系で必要な CD44 過剰発現株と CD44 ノックダウン株の作成・解析が終了した。臨床検体の解析については、解析対象とする検体のピックアップが終了し、今後免疫染色による解析・評価をおこなう予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、臨床検体の解析に主眼を移して検討をおこなう。 一方、in vitro の解析では、CD44 ノックダウンをおこなった HCC4006 細胞株では EMT 変化を認めなかったことより、今後はこの獲得耐性株の耐性機序の探索もおこなう必要がある。EGFR 遺伝子の2次的変異を認めなかったことより、バイパスシグナルの活性化などを検討する。 また近年、新規 EGFR-TKI である tarloxotinib が開発され、EGFR-TKI 初期耐性や獲得耐性の克服に有用である可能性がある。このため、EGFR-TKI のひとつとして tarloxotinib を含めた in vitro 解析もおこなう予定である。
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