研究実績の概要 |
昨年度までの研究で、「EGFR-TKI の種類によって、薬剤曝露後超早期(72時間)の時期に、がん細胞が薬剤不応性を獲得するかどうかが異なる」という現象を観察していた。本年度はその分子機序について検討を進め、EGFR リン酸化の阻害が弱いと(作用の比較的弱いEGFR-TKI の使用または低濃度の EGFR-TKI の使用)、薬剤不応性が獲得され難いことを示した。また、CD44高発現で、種々のEGFR-TKIに対し EMT(上皮間葉転換)による TKI 耐性を獲得する HCC4006 細胞株の検討で、初期の薬剤不応性に RYK 分子が関わっていることを同定した(Ohara S and Suda K, et al. Lung Cancer, in press)。 また、昨年度に国際学会で発表した EGFR exon 20 挿入変異を有する肺がんモデルに対する tarloxotinib の効果およびその獲得耐性機序について、論文発表した(Nishino M and Suda K, et al. Thoracic Cancer 2021)。 さらに、EGFR 遺伝子変異を2つ有する肺がん(compound EGFR mutation)に関する検討をおこない、これらの2つの EGFR 変異は homogeneous に分布することを示した(Suda K, et al. Clin Lung Cancer 2021)。獲得耐性機序を予測し得るかという命題にも直結する「EGFR-TKI 獲得耐性機序はそもそも同一患者内において homogeneous なのか」という臨床的疑問についても更なる検討をおこない、約半数の患者で獲得耐性機序の heterogeneity があることを同定、論文発表した(Suda K, et al. Lung Cancer 2020)。
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