研究課題/領域番号 |
18K07338
|
研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
森 誠一 公益財団法人がん研究会, がんプレシジョン医療研究センター 次世代がん研究シーズ育成プロジェクト, プロジェクトリーダー (10334814)
|
研究分担者 |
清谷 一馬 公益財団法人がん研究会, がんプレシジョン医療研究センター 免疫ゲノム医療開発プロジェクト, 主任研究員 (30433642)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 免疫ゲノム / がん肉腫 / TCRレパトワ / 免疫細胞プロファイリング |
研究実績の概要 |
本研究は、子宮および卵巣癌肉腫の悪性度・予後に寄与するがん免疫微小環境を明らかにすることを目的としている。癌肉腫は予後不良の希少がんであり、コホートサイズを確保することが難しく、治療法開発につながる研究は十分に行われていない。申請者らは、142検体のゲノムプロファイリングを行い、癌肉腫を悪性度および予後が大きく異なる4分子型(POLE, MSI, CNH, CNL)に分類できること、それぞれの分子型は背景としてDNA修復経路遺伝子異常を有していることを見出した。SNV/Indel数が極端に多いPOLEならびにMSIサブタイプの癌肉腫は、ほとんど再発や転移を生じない一方で、SNV/Indel数が少ない、CNL/CNHサブタイプは非常に予後が悪いことが判明している。近年の腫瘍免疫学の急速な発達により、治療抵抗性や転移・再発における、T細胞を含む種々の免疫細胞の種類、数や機能などのがん免疫微小環境の重要性が明らかになってきたが、癌肉腫におけるそれらの寄与は不明である。本研究では、癌肉腫の免疫微小環境を解析することにより、癌肉腫の悪性度を抑制し、予後を改善するような新たな治療戦略の開発を目指す。 RNA-seqデータを用いてTIL等の腫瘍浸潤免疫細胞のプロファイリングを行ない、各分子型において種々の免疫細胞のスコアが統計学的有意差を示したが、CD8陽性T細胞や形質細胞は、特にMSIサブタイプにおいて高いスコアを示した。CNHサブタイプではM2マクロファージが多かった。TCRレパトワ解析を行ったところ、T細胞の複雑性は分子型に相関していたが、同時に種々の臨床病理情報や分子型と独立して予後と相関することが判明した。癌腫と肉腫の分取解析で、癌腫と肉腫は変異を共有するが、レパトワは共有していないことが判明した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した解析は完了し、論文を作成、提出することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
1. 8症例分について、癌腫と肉腫を分取しているので、それぞれのTILがどのように異なっているのか、解析する。 2. 子宮体がんのmulti-region解析を行い、変異とレパトワの関係性を検索する。 3. オミックスデータのある142検体について免疫染色を行い、CD3, CD4, CD8, PD-1, PD-L1, FOXP3陽性細胞の細胞密度 癌肉腫と類縁疾患の子宮体がんの、変異・免疫原性と、浸潤する免疫細胞の比較を行うことで、癌肉腫がなぜ子宮体がんに比べて悪性度が高いのか、その分子機構の一端を解明し、がん肉腫の予後を改善するような新たな治療戦略の開発する基盤を構築することができると考える。
|