研究実績の概要 |
対象:子宮または卵巣に発生する癌肉腫は、癌腫成分と肉腫成分の両方を有する、大変予後不良で、かつ罹患者数の少ない希少癌である。我々は、以前の研究でゲノム異常プロファイルにより、癌肉腫には4つの分子型 (POLE, MSI, CNH, および CNL) が存在し、患者の予後を含む種々の臨床病理パラメータと相関することを示した。しかし、免疫微小環境が癌肉腫においてどのような役割を果たしているか不明であった。そこで、婦人科癌肉腫の免疫学的ステータスをより理解する目的で、癌肉腫に浸潤する細胞の影響を調査した。 方法:RNA-seqによる免疫細胞プロファイリング、微小環境遺伝子によるサブタイピング、T細胞レパトワアッセイを用いて、癌肉腫検体の免疫微小環境解析を行なった。癌腫と肉腫成分についてもそれぞれ解析した。 結果:RNA-seqにより免疫浸潤細胞を推定した結果、POLEとMSIのハイパーミューテーターでは、M1マクロファージ、形質細胞、CD8陽性T細胞が増加し、一方で、CNHとCNLという非ハイパーミューテーターでは、M2マクロファージが増加していることが分かった。免疫関連非癌細胞遺伝子の発現解析により、特にCNHサブタイプにおいて、患者予後と相関するサブグループの存在が明らかとなった。T細胞の複雑性は無増悪生存期間の延長の独立した予後因子であった。分取解析で、癌腫と肉腫は、癌細胞の変異は共有しているのに、T細胞レパトワはほとんど共有していないことが分かった。 結論:腫瘍の免疫微小環境解析は、婦人科癌肉腫の層別化における臨床的有用性を示した。
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