研究課題/領域番号 |
18K07342
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
向原 徹 国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院, 科長 (80435718)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 循環細胞中がん細胞(CTC) / 3D培養 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、3D培養を用いて、HER2陽性乳癌の抗HER2薬感受性に関して、PIK3CAの活性化型変異が寄与しているか検討した。PIK3CA変異型HER2増幅細胞では、 trastuzumabやpertuzumabの曝露に対して増殖抑制効果はほとんどみられず、AKT阻害薬の添加によって耐性が克服(細胞増殖抑制およびアポトーシスの誘導)されることを示した。また、AKT阻害薬を抗HER2剤に添加することによる細胞内シグナルの変化を詳細に解析し、リン酸化型AKTがAKT阻害薬添加により逆説的に発現上昇するのに対して、リン酸化型4EBP1のの抑制が増殖抑制と相関していることを示した。また、その所見をさらに強固にする所見として、cap-pulldown assayを用いた実験により、AKT阻害薬添加によりelF4Eと4EBP1の結合が上昇することを示した。さらに、PI3K/AKT阻害薬はAKT阻害薬と同等の増殖抑制効果を示す一方、mTOR阻害薬の効果は劣ることを示し、これら増殖抑制効果とリン酸化型4EBP1の抑制程度には正の相関があることを示した。これらの結果は、リン酸化型4EBP1がHER2陽性乳癌に対する抗HER2療法のpharmacodynamic markerとしての意義を示唆する。本結果を論文報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
体腔液の3D培養に関しては、依然として実験を実施する研究者が確保できずに遅れている。 一方、CTCの3D培養に向けた、CTCの収集方法、解析方法に関しては、ノウハウを蓄積しつつある。乳癌及び前立腺癌症例において、腫瘍生検とCTCの採取を同時に行い、CTCがその時点での腫瘍形質を反映しているかを探索する予備的研究を計画している(IRB承認済)。
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今後の研究の推進方策 |
実験を実施するレジデントや実験補助員が確保できつつあるため、これら人的リソースをつかって研究を推進したい。基礎部門のテクニック面やハード面でのサポートは引き続き得られる環境にあり、それを基に研究を実施したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験実施者を十分に確保ができず、3D培養を用いた治療実験、CTCの分析以外の研究が滞った。本年度は、実験実施者を確保し、研究をスタートさせる予定である。 主に、3D培養用のプレートや培養液等の消耗品に使用する予定である。
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