最終年度である令和4年度は、βカテニンをコードするCTNNB1遺伝子に変異を有する細胞に対する、βカテニン阻害薬の効果を検討した。CTNNB1以外の遺伝子変異プロファイルによりさまざま細胞株パネルを準備し薬効試験を行った。その結果として、ある特定のシグナル経路に遺伝子変異のある細胞で感受性が高いことが見出された。RNAシーケンスを行い、いずれの経路への作用がこの現象を説明するかを解析中である。 研究期間全体を通じて、2D培養下と3D培養下の薬効の相違について検討をしてきた。3D培養下で、抗HER2薬やβカテニン阻害薬の薬効試験が可能で、臨床的意義も深いデータが得られることが示唆できたことは本研究の成果として挙げられる。一方で、当初最大の目標としていた体腔液中癌細胞および循環血液中癌細胞(CTC)の脂肪幹細胞との共培養系の確立には至らなかった。CTCに関しては、イメージングフローサイトメトリーを用いて乳癌細胞の細胞表面マーカーを観察することは確認できたが、その後の共培養には回収可能な細胞数の数等に鑑みてチェレンジできなかった。体腔液中の癌細胞の初代(3D)培養については現在も引き続き取り組んでいる。
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