研究実績の概要 |
がん患者血清中からがん診断に有用な腫瘍マーカーの探索を行った。血清O-型糖鎖は中性糖とシアル酸が付加した酸性糖から構成されている。酸性糖を効率的かつ網羅的に検出するためN-アセチルノイラミニダーゼの基質特異性を利用した血清グライコミクス解析を行い、がん患者に特異的な糖鎖構造を検出した。これまでの解析で見出している硫酸基付加した微量酸性糖14種類に加え、糖鎖構造側鎖にシアル酸が付加したユニークな酸性糖を新たに17種類見出した。詳細な構造解析を行った結果、これまでにがん抗原として見出され、既にがん診断に利用されているSTnに加え、がん抗原として報告のなかったSda/CAD抗原を有する糖鎖構造が8種類含まれていた。Sda/CAD抗原はNeuAcα2-3Gal構造のgalactoseにGalNAcがβ1,4結合した構造であり、CA19-9の本体であるsialyl Lewis A構造と共通の前駆体を持つ。 血清グライコミクスにより見出した全腫瘍マーカー候補は、3連四重極型質量分析計を用いたSRM(selected reaction monitoring)法で血清中の相対定量を行った。先に腫瘍マーカー候補として報告していた14種類の硫酸基付加糖鎖のSRM定量結果と合わせると、個体ごとに高値を示す糖鎖構造が全く異なり、硫酸基付加糖鎖が高値でもシアル酸付加糖鎖は高値を示さない検体や、またその逆の検体もあった。また既存のCA19-9やCEAが基準値以下にもかかわらず、腫瘍マーカー候補の値が高い検体もあり、がん診断には複数の腫瘍マーカーを用いた測定が有効であることが示唆された。
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