研究実績の概要 |
本研究ではデフォルト・モード・ネットワーク(DMN)が、安静時fMRIのスキャン中における被験者の覚醒度と関連しているかどうかについて検討した。安静時fMRIが精神疾患のバイオマーカー候補であることを考えると、覚醒度とDMN活動の関連を調べることは重要な研究課題である。安静時fMRIと眼球運動/瞳孔径の同時計測により、健常被験者の覚醒度の変化に関わる脳領域を調べた。 20名の健常被験者(男/女=12/8, 平均年齢23歳)が実験に参加した。3TMRIとマルチバンド・エコー・プラナー法(TR=1.0s)により、安静開眼時の脳活動を計測した。同時にMRI対応眼球運動計測装置により、眼球運動と瞳孔径を計測した。瞳孔面積を標準化した値の時系列データを覚醒度の指標とし、閉眼、瞬目、傾眠の3条件を作成した。画像データはSPM12で処理し、グループ解析でp=0.001(uncorrected)を閾値とした。 結果としてスキャン中の平均瞬目回数は18.3回/分(sd=11.3)で、傾眠の割合は平均21%(sd=22)であった。傾眠時に活動が亢進する脳領域は両側の感覚運動野、上側頭回、視覚連合野であった。覚醒時に活動が亢進する領域は両側の内側前頭前野(DMN)、後部帯状回(DMN)、視床、尾状核、小脳であった。視床の活動の時系列データを用い、各被験者で覚醒/傾眠の状態が判別可能であった。 結論として、安静時fMRIスキャン中の約20%の時間は傾眠状態の可能性があった。覚醒度の上昇には、視床を含めた皮質下領域と内側前頭葉・後部帯状回(DMN)の活動が重要であった。視床のデータから、被験者の覚醒度を判別できることが分かった。本結果はDMNの活動が安静時fMRIスキャン中の覚醒度によって変動することを示している。安静時fMRIデータをバイオマーカーとする場合は、被験者の覚醒度を考慮する必要がある。
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