研究実績の概要 |
本研究では、食欲調節に関わる視床下部-大脳皮質神経ネットワークの解明を目的としている。まず、ヒト視床下部-大脳皮質ネットワークの同定という第1の目標に向け、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)による高空間解像度計測を行い、視床下部の機能的分割法(Osada et al., Neuroimage, 2017)を拡張し、安静時のニューロンの機能的結合性から、個人レベルでの視床下部の機能的分割を行い、核の同定を行った。同定された核から、それぞれとネットワークを形成している大脳皮質領域を同定した。 視床下部-大脳皮質神経ネットワークの検証を行うとともに、機能的分割法を他の皮質下領域にも適用し、線条体における機能的領域を同定し、それぞれが形成している大脳皮質とのネットワークについての検証を進め、研究成果を学術雑誌Human Brain Mappingに報告した(Ogawa, Osada et al., Human Brain Mapping, 2018)。さらに、視床下部-大脳皮質神経ネットワークに対しての介入手法として用いる予定である経頭蓋磁気刺激法(TMS)を使い、反応抑制課題でのfMRI法によって同定された頭頂葉領域に対し介入を行い、課題遂行に影響が出ることを発見し、成果を学術雑誌Journal of Neuroscienceに報告した(Osada et al., Journal of Neuroscience, 2019)。また、TMS介入による影響を及ぼす領域の空間的範囲についてfMRIによる検証を行い国際学会(FAOPS2019)において発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究での第1目標であるヒト視床下部-大脳皮質ネットワークの同定に向けて、1.25mmボクセルでの高空間解像度fMRI計測を行い、個人レベルでの視床下部の機能的分割を行った。以前に報告した視床下部の機能的分割法(Osada et al., Neuroimage, 2017)を拡張し、安静時のニューロンの機能的結合性から、個人レベルでの視床下部の機能的分割を行い、核の同定を行った。同定されたそれぞれの核と機能的結合性をもつ大脳皮質領域を同定し、視床下部核―大脳皮質のネットワークについて検討を進めている。 上記の視床下部―大脳皮質ネットワークの同定を進めるとともに、(1) 他の皮質下部位へも機能的分割手法を適用し、線条体の機能的分割を行い、機能的分割部位と大脳皮質とのネットワークについての検証 (Ogawa, Osada et al., Human Brain Mapping, 2018)、(2) 介入手法として用いるTMS法を用い、反応抑制課題においてfMRI法により同定された頭頂葉の頭頂間溝領域に対し介入を行い、課題遂行への因果的影響の検証(Osada et al., Journal of Neuroscience, 2019)、(3) 反応抑制課題における脳機能の経時的変化のfMRIによる検証(Yamasaki et al., Frontiers in Human Neuroscience, 2018)など、fMRIによる脳ネットワーク分析および脳部位の行動に対しての因果的影響の検証のためのTMS介入を適用することで研究の対象の幅を広げてきている。
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