研究課題/領域番号 |
18K07352
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
猿渡 正則 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (90452309)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 視覚的注意 / 動機付け / V4野 / 報酬 / 予期 / 覚醒 / 目標選択 / 単一神経細胞活動 |
研究実績の概要 |
サルを用いた単一神経細胞活動記録の研究により,視覚領野の神経細胞が,視覚的注意の状態に相関して活動を変化させることが多数報告されてきた.これらの研究では,活動を記録中の神経細胞の受容野に物理的に同一の視覚刺激を提示する一方で,動物が受容野内の刺激に注意を向けた条件と向けない条件で生じた細胞活動の差を,注意によるものと解釈してきた.しかしながら,これらの研究では注意を向けるべき刺激には常に報酬が連合されており,観察された細胞活動の差は,実は注意によるものではなく報酬期待を反映していた可能性がある.本研究では,視覚野の神経細胞活動を,注意と報酬(とりわけ動機付け)の両方を要因にして細胞活動が変動する統計モデルを用いて解析し,視覚野の神経細胞活動における報酬系の関与を検証することを目的としている.
サルに注意研究で用いられてきた視覚探索課題を訓練し,課題遂行中に第四次視覚野(V4野)から単一神経細胞活動を記録する.報酬の量を試行ごとに変えることで,動物の報酬期待,とりわけ動機付けが異なる条件を導入する.もし,V4野の神経細胞活動が報酬系に関与していれば,報酬以外の実験条件が同一であっても,報酬量に依存して活動の変化が観察されるはずである.
令和2年度は前年度に引き続き,1頭目のサルへの行動課題の訓練を進めた.インプラントした実験器具が破損するアクシデントに見舞われ,更に,新型コロナ流行に伴う自粛の影響で,計画は遅延している.早期に動物の訓練を完了し,神経細胞活動記録を開始する方針である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では,サルに視覚探索課題を訓練し,課題遂行が出来るようになったのちに,課題遂行中の動物から神経細胞活動を記録する.計画では2頭の動物から記録する予定であり,課題の訓練には,サル1頭あたり半年から1年ほどを予定し,記録実験では更に1年ほどを要する.1日に,複数の頭数の課題の訓練と神経細胞活動記録を並行させることで,3年での実験終了を見込んでいた.
初年度のサル導入の遅れに伴い,前年度の段階で進捗は当初の計画から全体的にやや遅れていた.本年度は,実験に使用する2頭のうち1頭で,訓練完了前にインプラントした実験器具が破損してしまうアクシデントに見舞われた.動物の回復を待って再度のインプラントを実施し,訓練を再開する必要が生じた.更に,新型コロナの流行にともない,実験の中断を余儀なくされ,更には資材の調達にも遅延が生じた.現在,課題の訓練中である.
以上より,進捗状況は「遅れている」と評価した.
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度に引き続き,1頭目の動物に視覚探索課題を訓練する.訓練に並行して,神経細胞活動記録のための実験装置の制作を行い,訓練完了とともに記録実験を開始できるようにする.1頭目の動物の記録実験を開始したら,並行して2頭目の動物の訓練を開始し,こちらも訓練が完了次第,記録実験を開始する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
全体的に計画が遅延したため,延長を申請し承認を得たところである.
前年度までに神経細胞活動記録の実験を開始出来なかったため,計上していた実験装置の費用が未使用である.また,海外で開催される学会に参加するために計上していた旅費についても,令和3年度の開催が困難と予想される.これらの費用は,令和3年度に開始する神経細胞活動記録の実験装置にて使用する予定である.
|