研究実績の概要 |
食欲が脳でどのように作られ、調節されているかは、飽食の時代と言われる現代の重要な課題である。これまでの研究で、脳内の特定の神経核や伝達物質等の摂食行動への重要性が明らかにされてきたが、我々の行動を突き動かす欲が、脳内でどのように作られているかについては、まだ不明な点が多い。本研究では、動物が特定の行動をする際の神経活動を指標として、関係する神経回路の同定と更なる機能解析を目指している。動物の行動としては、食欲に関係する摂食行動を用い、神経活動マーカーとして、c-fosとArcに着目して、それぞれが、摂食行動によって発現するかどうかの確認から開始した。摂食行動には、餌を食べる行動以外に、餌を期待する行動、食べた餌を評価する行動があるが、本研究では、主に、餌を期待する行動に重点を置いて実験した。神経活動を効率的に指標とするために、c-fos-tTAマウス(Reijmers et al. 2007)、Arc-creマウス(Guenthner et. al., 2013)を導入して実験を行っている。どちらのラインも順調に繁殖し、十分な実験を行うことができた。本年度は、主に、視床下部領域と大脳皮質領域に着目してそれぞれのマウスラインにおいて活性化された細胞が蛍光色素を発現し、視覚化された神経細胞が存在することを確認した。そして、DREADD等の神経活動操作を行うことにより、摂食関連行動に変化が見られないかどうかを検討しているところである。
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