研究課題
我々の脳の中で、食に対する欲望がどのようにつくられ、調節されているのかは、現代の重要な課題である。身体的状況、社会的状況によって、食欲は増減することは皆に経験のあることだと考えられるが、日本や他の先進各国で、各個人の望む分の食糧は、望むときに手に入れられる状況であり、基本的には、我々人類は、飽食と上手に付き合いながら健康な暮らしを営む必要がある。これまでの研究で、脳内の特定の神経核や伝達物質等の摂食行動への重要性が明らかにされてきた。しかし、我々の食に対する行動を突き動かす欲が、脳内でどのように作られているかについては、まだ不明な点が多い。本研究では、動物が特定の食行動を行う際の神経活動を指標にすることによって、関係する神経回路を同定することと、更なる機能解析を目指している。動物の行動としては、食欲に関係する摂食行動を用い、神経活動マーカーとして、最初期遺伝子であるc-fosやArcに着目して、それぞれが、摂食行動の良い指標となりうるかどうかの検討を続けている。本研究では、主に、餌を期待する行動に重点を置いて実験している。2週間にわたる摂食制限によって形成された餌予測行動時に、c-fos、Arcそれぞれの発現度合いを免疫組織化学染色によって評価した。視床下部領域と、大脳皮質領域に着目して、それぞれの発現を確認したところ、Arcよりもc-fosのほうが、より、マウスの餌予測行動と相関した変動を示すことが明らかになった。今後は、c-fos発現で観察した、餌予測行動と相関した神経活動の変動が、どのような食行動の表出に関わっているのか、さらに研究を進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
動物の摂食に関する行動表出に関係する神経活動を、より相関よく観察できる最初期遺伝子を検討でき、関連神経領域が、実際にどのように摂食に関する行動に関与しているのかを検討する準備が整った。
新型コロナウイルス感染防止対策のため、研究室への出入りが制限されてしまう可能性はあるものの、これまでの研究で見出してきた食予測行動と相関のある神経領域の機能解析を、動物の行動反応を観察することで進めていきたい。
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Scientific Reports
巻: 10 ページ: 1-12
org/10.1038/s41598-020-61823-4