研究課題/領域番号 |
18K07361
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
中矢 正 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (50374559)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | FUS / 筋萎縮性側索硬化症 / R495X / 凝集体 / RNA結合 |
研究実績の概要 |
核内RNA結合分子であるFUSは筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因因子の一つであることが知られている。特に家族性ALS患者で認められる変異型FUSは、細胞内において凝集体を形成し毒性を持つと考えられている。しかしながら、その凝集体生成分子機構及び細胞毒性に関する分子機構は明らかではない。495番目のアルギニンが停止コドンに変異したR495X 変異は家族性ALS患者で見いだされたものであり、同変異を持つ患者において重篤な疾患症状を引き起こす。野生型FUSはC末端部位に核移行シグナルを持つが、R495Xではそれが完全に欠失しているため、同変異体は異所的に細胞質に多く局在する。一方、一定数の非家族性ALS患者でも、変異を持たない野生型FUSが細胞質に異常に蓄積することから、FUSの細胞質への異所的な局在がALS発症に深く関わると考えられている。よって、R495Xによって引き起こされる細胞内異常、及びその分子機構を明らかにすることでFUSが寄与する発症分子機構が明らかにできると考えられた。これまでにFUSタンパク質分子内ドメイン欠損R495X変異体を用いた解析から、特定のドメインがR495XとRNAの結合に重要であることを明らかとしてきた。更に、それら領域がR495X変異体の凝集過程、及びその細胞毒性と深く関わること、結合するRNA種がそれらドメインで異なることを見出した。これらの実験結果から、R495Xが神経細胞毒性を示す分子機構として、1)凝集体形成に必要な領域にRNAが結合することでR495Xが凝集し、2)更にその凝集体内において細胞毒性に必要な領域にRNAが結合することで神経毒性を示す、という2段階の機構の存在が明らかとなった。また、同結合遺伝子群の解析から、局所的タンパク質翻訳に関わる遺伝子群がR495Xと結合していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概要に記したように、これまで未解明であったR495X変異体のRNA結合様式を明らかにすることができた。この現象がどのように神経細胞死を引き起こしているのか、明らかにする必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
結合RNAの解析から、R495Xの発現によって局所的タンパク質翻訳の異常が引き起こされている可能性が考えられた。また、その機能細胞内領域として、神経軸索である可能性が考えられた。そこで、マウスES細胞由来神経細胞にR495Xを発現させ、タンパク質翻訳阻害、及び R495X標的遺伝子のタンパク質翻訳過程を生化学的・細胞生物学的手法により解析し、その検証をすすめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
翻訳過程の解析について令和元年度にすすめる予定であったが、その手法の確立に手間取り、試行錯誤する結果となった。しかしながら、ある程度実験系が動くことが示されたことから、その実験遂行を次年度に持ち越した。遺伝子のタンパク質翻訳過程を生化学的・細胞生物学的に解析するため、抗体、遺伝子増幅の為のプライマー及び細胞培養に掛かる経費として使用する計画である。
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