研究課題/領域番号 |
18K07363
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
成瀬 雅衣 千葉大学, 大学院医学研究院, 特任講師 (60455219)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 髄鞘再生 / 神経幹細胞 / ミクログリア / オリゴデンドロサイト前駆細胞 / 老化 |
研究実績の概要 |
成熟した脳におけるニューロンの産生は,霊長類をふくむ様々な動物の脳室下帯で観察されている。正常状態では嗅球へ神経細胞を供給している脳室下帯の神経幹細胞が、脳損傷時には障害部へ神経細胞を供給する様相を示すことが確認されており、このことは内在性の神経幹細胞が脳の損傷修復のためのターゲットになり得ることを示唆している。 白質損傷においても、髄鞘再生を担う細胞の起源の一つは神経幹細胞であることが報告されている。 しかしながら、神経幹細胞が損傷を感知し、正常の神経新生から脱髄巣の髄鞘再生へ寄与する過程の細胞動態の詳細と分子基盤はまったく不明であった。 この点を明らかにするため、薬剤(リゾレシチン)投与により局所脱髄を脳梁で誘導し、髄鞘損傷後の脳室下層の細胞動態を解析した。本課題では、局所白質損傷によって損傷領域のみならず神経幹細胞の存在する脳室下層でもミクログリアが活性化し、活性化されたミクログリアが神経幹細胞に働きかけ、神経幹細胞からオリゴデンドロサイト前駆細胞産生を誘導し髄鞘再生に寄与すること、また白質の障害領域に依存して神経幹細胞の動態が異なることを明らかにしている。 しかしながら、これらの結果は8週齢という若いマウスを使用した解析であった。本年度は老化に伴う神経幹細胞による髄鞘再生能の変化を老化モデルマウス(SAMP8系統)を使用して解析した。老化モデルマウスでは、髄鞘損傷時に生じる脳室下層のミクログリアの活性化が低下し、神経幹細胞からのオリゴデンドロサイト前駆細胞の産生能も低下していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
週齢の揃った老化モデルマウスでの実験数を揃えるのに時間がかかったため、実験経過に遅れが出た。また本年度の途中から千葉大学へ異動したため、研究環境を移行する時間が必要になった。
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今後の研究の推進方策 |
内在性の神経幹細胞が脳の損傷修復ののためのターゲットになり得ることが示唆されているが、その再生能は限定的であり、比較的再生が起こりやすい齧歯類の白質においても再生能は老化によって低下する。本課題では、その神経幹細胞の損傷時の運命転換を担う一つの要因がミクログリアの活性化であることを明らかにしている。今後は、成熟、老化によって低下する神経幹細胞の可塑性を戻すシグナルを探索し明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
老化モデルマウスでの実験数を揃えるのに時間がかかったため次年度使用額が生じた。 内在性の神経幹細胞が脳の損傷修復ののためのターゲットになり得ることが示唆されているが、その再生能は限定的であり、比較的再生が起こりやすい齧歯類の白質においても再生能は老化によって低下することが明らかになった。脳損傷時において、神経幹細胞からオリゴデンドロサイト前駆細胞や神経細胞産生を誘導するシグナルや、成熟、老化によって低下する神経幹細胞の可塑性を戻す遺伝子をスクリーニングするためのRNA-seq解析の費用、遺伝子機能を解析するための遺伝子導入用のマウスを購入する費用として使用する。
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