研究課題
昨年度の研究において,Cyr61の脊髄くも膜下腔内投与により誘発される機械的アロディニア反応が,α5β1阻害薬であるATN161との同時投与によりほぼ完全に抑制されることを見出した。ATN161は小分子ペプチド(Ac-PHSCN-NH2)であり,医薬品として開発するためには,バイオアベイラビリティーのより優れた小分子化合物の開発が望まれる。そこで,これまでに見出した小分子拮抗薬(化合物F,ただし活性は弱い)と,ATN161の構造の両方を有するようなキメラ化合物のデザインを試みた。両化合物の構造を組み合わせた結果,試験的ではあるが3つの化合物(K-M)をデザインし合成した。これらの化合物のインテグリン阻害化アッセイを調べたところ,化合物Kにおいて化合物Fより若干ではあるが,より強い阻害活性を得ることができた。今後,化合物Kをリード化合物として,構造活性相関を視野に入れた誘導体合成展開と活性評価に取り組む予定である。ATN161はα5β1のほかにもαvβ3阻害活性を有する。そこで,Cyr61誘発アロディニア反応にインテグリンαvβ3も関与するのかどうかを調べる目的で,αvβ3阻害活性をもつCilengitide(αvβ3,αvβ5),Echistatin(αvβ3),P11(インテグリンαvβ3-vitronectin)の効果を検討した。Cyr61誘発アロディニア反応はこれらすべての化合物により抑制した。Cyr61は多くのインテグリン結合ドメインを有することから,Cyr61誘発アロディニア反応には,α5β1だけでなく,少なくともαvβ3も関与することを見出した。今後はαvβ3をターゲットとした創薬,あるいはα5β1とαvβ3の両者を阻害できるような創薬の展開を行っていきたいと考えている。
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