研究課題/領域番号 |
18K07367
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
石垣 診祐 名古屋大学, 医学系研究科, 特任准教授 (40378170)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ALS / FTLD / FUS / SFPQ / タウ / PSP / タウオパチー / CBD |
研究実績の概要 |
1.FUSとSFPQの結合変化についての疾患横断的検討:FUSとSFPQの核内での結合変化について、FUS/SFPQ機能異常が病態を反映する疾患スペクトラムを明らかに目的で、非神経疾患剖検脳、ALS/FTLD、進行性核上性麻痺 (PSP)、アルツハイマー病や大脳皮質基底核変性症(CBD)、Pick病などの剖検脳におけるFUS・SFPQの微小局在の変化について、海馬歯状回切片を用いて疾患横断的に比較検討を行った。その結果、FUSとSFPQの結合性の変化はALS、PSP、CBDで対照群と比較して有意に低下していたが、アルツハイマー病では変化を認めなかった。この結果から、FUS・SFPQの神経細胞核内における微小局在は広義のFTLD疾患スペクトラムにおいて障害されていることが明らかになった。 2.FUSとSFPQ のMAPTの選択的スプライシングを制御するメカニズムの解明:FUSおよびSFPQがMAPTの選択的スプライシングを制御するメカニズムの詳細を明らかにするために、MAPT ex10の前後のexonおよび200-300bpほどの隣接intronを含むmini-geneを作成し、それに結合するタンパク質profileを作成した。FUSおよびSFPQ以外に、多くのRNA結合タンパク質がprofileに含まれることが明らかになった。 3.孤発性ALSに認められたSFPQ変異についての機能解析: JaCALSで確認した孤発性ALSにおけるSFPQの変異についてFUSの結合性の変化およびMAPTの選択的スプライシングなどRNA代謝における影響を明らかにする目的で同定した点変異を導入した変異SFPQを発現する神経細胞株(N2a)の遺伝子編集を用いた作成に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FUSとSFPQの結合変化についての疾患横断的検討においては、非神経疾患剖検脳、ALS/FTLD、進行性核上性麻痺 (PSP)、アルツハイマー病の症例をそれぞれ25-30症例解析が終了し、FUSとSFPQの結合性が広義のFTLDスペクトラムであるALS、PSP、CBDで対照群と比較して有意に低下していることを明らかにし、これらについて論文化に着手した。また、FUSとSFPQ のMAPTの選択的スプライシングを制御するメカニズムの解明、孤発性ALSに認められたSFPQ変異についての機能解析についても、研究の基盤となるシステムの構築が進んでおり、予定通りの進捗状況と考える。
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今後の研究の推進方策 |
1.FUSとSFPQの結合変化についての疾患横断的検討:2018年度の病理学的解析をもとに論文化を進める。2019年度からはこれまでの知見をもとに、実際にFUS・SFPQの機能不全がどのように高次脳機能障害を引き起こしているかについて、よりヒトに近いマーモセットにおいてFUS抑制を行ったモデルを作出し、その回路以上をtractographyなどで解析することで、分子メカニズムと疾患の発症機序の関連性を明らかにしていく。 2.FUSとSFPQ のMAPTの選択的スプライシングを制御するメカニズムの解明: MAPT 同定したMAPT pro mRNAに結合するタンパク質profileの中で、実際にex10のsplicingに関与する分子を同定する。また剖検脳におけるFUSとの結合性などから病的意義を持つ分子群を同定する。ここで得られたタンパク質profileの変化を、FUS・SFPQ抑制、4R-tauが優位になる生理的条件(serum deprivationなど)などで明らかにし、剖検脳を用いてFUSとの結合性を検討する。 3.孤発性ALSに認められたSFPQ変異についての機能解析:同定した点変異を導入した変異SFPQを発現する神経細胞を用いて、FUSとの結合性やMAPT exon10選択的スプライシングそのものに与える影響を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) すでに発注している輸入試薬が4月以降の納品となるため本年度未使用額が発生した。 (使用計画) 未使用額については、令和元年度に予定している輸入試薬の必要な動物実験に使用する予定である。
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