研究課題
1.FUSとSFPQの結合変化についての疾患横断的検討:FUSとSFPQの核内での結合変化について、FUS/SFPQ機能異常が病態を反映する疾患スペクトラムを明らかに目的で、非神経疾患剖検脳、ALS/FTLD、進行性核上性麻痺 (PSP)、アルツハイマー病や大脳皮質基底核変性症(CBD)、Pick病などの剖検脳におけるFUS・SFPQの微小局在の変化について、海馬歯状回切片を用いて疾患横断的に比較検討を行った。その結果、FUSとSFPQの結合性の変化はALS/FTLD-FUS、ALS/FTLD-TDP、PSP、CBDで対照群と比較して有意に低下していたが、アルツハイマー病とPick病では変化を認めなかった。この結果から、FUS・SFPQの神経細胞核内における微小局在は広義のFTLD疾患スペクトラムにおいて障害されていることが明らかになった。2.FUSとSFPQ のMAPTの選択的スプライシングを制御するメカニズムの解明:FUSおよびSFPQがMAPTの選択的スプライシングを制御するメカニズムの詳細を明らかにするために、MAPT ex10の前後のexonおよび隣接intronを含むmini-geneに結合するタンパク質profileを作成し、MAPT ex10の選択的スプライシングに影響を与える分子群を同定した。これらの多くはRNA結合タンパク質であり、FUSとSFPQとの結合するものが半分以上を占めることがわかった。3.孤発性ALSに認められたSFPQ変異についての機能解析: 孤発性ALSにおけるSFPQの変異についてFUSの結合性の変化およびMAPTの選択的スプライシングなどRNA代謝における影響を明らかにする目的で同定した点変異を導入した変異SFPQを発現する神経細胞株(N2a)の作成し、免疫沈降法でSFPQ結合タンパク質のprofileを作成した。
2: おおむね順調に進展している
FUSとSFPQの結合変化についての疾患横断的検討においては、非神経疾患剖検脳、ALS/FTLD、進行性核上性麻痺 (PSP)、アルツハイマー病、ピック病の症例を全142症例まで増やして解析を実施した。FUSとSFPQの結合性が広義のFTLDスペクトラムであるALS/FTLD、PSP、CBDで対照群と比較して有意に低下していることを明らかにし、封入体の存在とFUS/SFPQの会合障害には関連性が無いことを明らかにした。これらについて論文化を進めておりリバイス中である。また、FUSとSFPQ のMAPTの選択的スプライシングを制御するメカニズムの解明、孤発性ALSに認められたSFPQ変異についての機能解析について進んでおり、予定通りの進捗状況と考える。
1.FUSとSFPQの結合変化についての疾患横断的検討:論文化を進めリバイス中であり、2020年度は論文化終了後にこの知見をもとにしたバイオマーカー探索などの研究計画を立案する。またヒトに近いマーモセットにおいてFUS抑制を行ったモデルを用いて、その回路異常の解析から、分子メカニズムと疾患の発症機序の関連性を明らかにしていく。2.FUSとSFPQ のMAPTの選択的スプライシングを制御するメカニズムの解明: 同定したMAPT pro mRNAに結合し、スプライシング制御に関わるタンパク質群のなかから、病態意義を有するものを明らかにする。具体的には剖検脳におけるFUSとの結合性や機能喪失モデルにおける異常などから神経機能に与える影響を判断する。ここで得られたタンパク質profileの変化を、FUS・SFPQ抑制、4R-tauが優位になる生理的条件などで明らかにする。3.孤発性ALSに認められたSFPQ変異についての機能解析:同定した点変異を導入した変異SFPQのみでは、結合profileに大きな変化は与えなかった。このため、環境要因たとえばストレス応答などのもとでの複合体形成を明らかにすることで、SFPQ変異が神経細胞死に与える影響を評価する。
今後の研究方針を考える上で、SFPQにおいて同定した点変異を導入した変異のみでは、結合profileに大きな変化は与えなかったことから、これに関わる一連の実験の方針を一部変更し、MAPT pro mRNAに結合し、スプライシング制御に関わるタンパク質群として同定した分子に着目した実験を中心に研究を進めることとした。このため、これに関わる実験試薬や研究遂行するための情報交換や意見交換などを行っていく為の費用とする。
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