研究課題/領域番号 |
18K07368
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
小久保 康昌 三重大学, 地域イノベーション学研究科, 招へい教授 (60263000)
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研究分担者 |
森本 悟 三重大学, 医学系研究科, リサーチアソシエイト (00816952)
葛原 茂樹 鈴鹿医療科学大学, 看護学部, 教授 (70111383) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 筋萎縮性側索硬化症 / パーキンソン認知症複合 / 血液バイオマーカー / SIMOA / PET / タウ |
研究実績の概要 |
我々は紀伊ALS/PDCの髄液でAβは減少し総タウ、リン酸化タウは増加しない、という結果を得ている。(J Neurodegenerative Diseases 2013) しかしながら、髄液検査は侵襲性が高いため本研究では、紀伊 ALS/PDCの生前診断に有用で簡便な血液バイオマーカーの開発を目指す。本疾患では脳内にタウ、α-synuclein 、TDP-43蛋白が多重蓄積するため、血液中でこれらの蛋白質を検出できれば、臨床研究に向けた生前診断法の確立に結びつけることができる。当初、台湾のベンチャー企業であるMagQu(磁量)が開発した超高感度磁気検出システム (Immuno Magnetic Reduction; IMR)を用いて、血液中の特異的バイオマーカーを探索する計画であったが、2019年度中にIMRでは、標準試料を用いた測定でバリデーションが十分に取れないということが判明した。従って、IMR と平行して測定を行う予定であった高感度ELIZA法 SIMOA(Single Molecular Assay)に切り替えて血液バイオマーカーの同定を行うこととした。2018年度は、本研究の倫理申請承認、検査対象者をリクルートするための患者レジストリの整備、PBB3リガンドを用いたタウ PET 解析を行った。2019年度は、SIMOA 用の血液サンプルの採取に向けたマニュアルを作成しタウ PET解析を行った3名を含めた11名の患者について検体を収集した。2020年度は、SIMOAを用いた解析を開始し、2021年度に各蛋白質の解析結果を得た。2022年度は、SIMOA、タウPET解析を行った症例の剖検を得たため、2023年度中に脳内病理と画像および血液バイオマーカーとの比較解析結果をまとめ、論文採択を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度は、本研究の倫理申請を行い承認された。2019年度は、当初予定していたIMR を用いた解析について、開発元のMagQuにおいて標準試料を用いた測定バリデーションが十分に取れないということが判明した。そこで、IMRに代わる高感度ELISA(SIMOA: Single Molecular Assay)を用いた血液バイオマーカーの開発を目指すこととした。2019年度はSIMOAに用いる試料採取に向けたマニュアルを作成した。これまで構築してきた患者レジストリを解析のためのリクルートに活用し、マニュアルに沿った血液サンプルの収集を行った。2020.4.現在、これまでにPBB3リガンドを用いたタウ PET解析を行った3名を含めた11名の患者について検体を収集した。2020年度に放射線医学総合研究所との共同研究をさらに進め、2021年度にSIMOAを用いたNf、tau、Aβ、α-synuclein、TDP-43についての解析結果を得た。なお、PBB3を用いたタウPETは、紀伊ALS/PDC患者の脳内タウ蛋白を検出でき、タウ蓄積は認知症の程度と相関した。また、preclinical stage の患者でもタウの蓄積が検出できることがわかり、発症前診断の有力なバイオマーカーと考えられた。2022年度は、SIMOA、タウPET解析を行った症例の剖検を得たため、2023年度中に脳内病理と画像および血液バイオマーカーとの比較解析結果をまとめ、論文採択を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
当初予定していたIMR を用いた解析について、開発元のMagQuにおいて標準試料を用いた測定バリデーションが十分に取れないということが判明した。そこで、IMRに代わる高感度ELISA(SIMOA: Single Molecular Assay)を用いた血液バイオマーカーの開発を目指すこととした。2020年度は、2019年度に採取した十数名の患者の血液サンプルを用いてSIMOAによる解析を開始し、2021年度に Nf、tau、Aβ、α-synuclein、TDP-43についての解析結果を得た。2022年度は、各バイオマーカーと臨床病型の対比によってそれぞれのバイオマーカーの意味づけを行う。また、タウPETを施行した一部の患者では、SIMOAの結果とタウ蛋白の脳内蓄積状態との相対評価を行い、PET画像とSIMOAの関連を明らかにすることを目指す。2022年度に、検体採取した1例で剖検が得られたので病理所見とPET画像およびSIMOAの結果の対比を行う。2023年度は、このような臨床、病理情報と各バイオマーカー結果との統合解析を行うことで、紀伊ALS/PDCにおける血液バイオマーカーの評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由: SIMOAによる血液バイオマーカー解析に使用する解析キットの必要数が当初の計画よりも少なく済んだため。 使用計画: SIMOAによる血液バイオマーカー解析に使用する予定である。
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