研究課題/領域番号 |
18K07376
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
林 秀樹 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (90508657)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アポリポタンパク質E含有リポタンパク質 / 神経保護、 / アルファ2マクログロブリン / リポタンパク質受容体 |
研究実績の概要 |
緑内障は多因子性疾患と考えられており、直接的な発症原因は不明である。現在、臨床では主に眼圧を下げる治療が行われているが、日本の緑内障患者の7割以上は正常眼圧範囲内の患者であり、眼圧降下以外の機序による適切な治療薬・治療法の開発が急務である。これまでの研究代表者による研究で、グリア細胞由来のアポリポタンパク質E含有リポタンパク質(E-LP)がラット初代培養網膜神経節細胞のグルタミン酸誘導性神経変性に対し、強力な保護効果を示すことを報告している。また予備実験の結果から、グリア細胞から放出されるアルファ2マクログロブリン(a2M)が、E-LPと同様にリポタンパク質受容体の一つであるLRP1に結合し、神経保護効果を妨害することを示している。そこで本研究では、E-LPの神経保護効果およびa2Mによる妨害効果に着目し、LRP1を介する神経生存に関わる因子の働きを解明することを目的とした。本研究には初代培養網膜神経節細胞を使用し、培養液中に興奮性神経毒性を誘導するグルタミン酸を添加することで神経変性を誘導した。またE-LP添加による網膜神経節細胞保護効果およびa2Mによる神経保護妨害効果の検討、さらにミューラーグリア細胞からのa2M放出抑制効果の検討を行った。その結果、a2MによるE-LPの神経保護妨害効果と、ミューラーグリア細胞に対するE-LPの濃度依存的なa2M発現抑制効果が明らかとなった。また、このE-LPによるa2M発現抑制効果は、リポタンパク質受容体へのリガンドの結合を抑制するreceptor associated proteinによって阻害されたことから、リポタンパク質受容体を介した機序によるものと考えられた。本研究で得られた結果により、E-LPの網膜神経節細胞(視神経)保護効果に影響を及ぼすa2Mの働きの一端を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに、a2MによるE-LPの神経保護妨害効果を確認し、ミューラーグリア細胞に対するE-LPの濃度依存的なa2M発現抑制効果を明らかにした。また、receptor associated proteinを使用した実験で、このE-LPによるa2M発現抑制効果がリポタンパク質受容体を介した機序によるものであることを示した。このことから本研究課題は、おおむね順調に進展していると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、ミューラーグリア細胞に対するE-LPのa2M発現抑制効果がリポタンパク質受容体を介した機序であることを明らかにした。しかしながら、リポタンパク質受容体ファミリーの受容体のうち、どの受容体であるかは特定できていない。そのため、siRNAを用いた実験を行うことにより、E-LPのa2M発現抑制機序に関わる受容体を特定する。また、本抑制機序のミューラーグリア細胞内のシグナル伝達に関わる因子を探索する予定である。
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