研究代表者らはこれまで、International Brain pH Project Consortiumとして、各種の神経・精神疾患の病態モデル動物の脳のpH、および、pHの変化に関わっていると想定される乳酸濃度の解析を行ってきた。今年度までに本研究プロジェクトにおける共同研究者は、合計131名にまで上った。本研究成果を取りまとめて論文を執筆し、査読付き学術誌への投稿を行なっている。また、脳のpH・乳酸濃度の変化が見られたモデルマウスにおいて、遺伝子発現パターンの解析から、海馬の成熟度異常あ生じていることを示唆する知見を得た。さらに、研究代表者らは、脳の遺伝子発現パターンがpHのsurrogate indexとなることを見出した。公共データベースに登録されている遺伝子発現データセットのメタ解析を行い、pHに関連して発現量が変化する遺伝子群(pH関連遺伝子)の発現パターンを元に、各種の神経・精神疾患患者、および、その病態モデルマウスの脳の遺伝子発現パターンの特徴づけを行なった。その結果、複数の神経・精神疾患、および病態モデル動物に共通して脳でpHが低下していることが、pH関連遺伝子の発現パターンの解析から推定された。pH関連遺伝子群の発現変化が、神経・精神疾患の疾患横断的な病態についての理解を深めるための新しい分子メカニズムとして寄与することが示唆された。本研究成果について、査読付き学術誌へ論文投稿を行い、リバイス中である(2023年3月31日時点)。
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