研究課題
未分化型シュワン細胞の培養上清がヒト膵臓がん細胞である Capan-1 の増殖に影響を及ぼすか否かを明らかにするため、MTT assayと足場非依存性増殖を評価する soft agar assay を行った。その結果、いずれの評価系においても未分化型シュワン細胞の培養上清による Capan-1 細胞の増殖能に大きな影響は認められなかった。さらに、Capan-1 細胞の sphere 形成能を検討する目的で spheroid colony assay を実施したところ、未分化型シュワン細胞の培養上清による spheroid 形成能に変化は認められなかった。これらの結果とこれまでの解析から、未分化型シュワン細胞は、がん細胞の増殖能には影響を及ぼさず、遊走能を調節している可能性が示唆された。次に、細胞間相互作用を解析する目的で緑色の蛍光物質であるEGFPを導入した Capan-1 細胞と赤色の蛍光物質である DsRed を導入した未分化型シュワン細胞を作製した。これらの細胞を共培養し、タイムラプス顕微鏡を用いて経時的に観察を行ったところ、Capan-1 細胞は通常よりも小さく立体的な島を形成するように増殖し、未分化型シュワン細胞は Capan-1 細胞を取り囲み、頻回に突起を伸展させて Capan-1 細胞に contact している様子が観察された。さらに観察を続けたところ、Capna-1 細胞は未分化型シュワン細胞の中に入り込み、未分化型シュワン細胞は Capan-1 細胞を覆う様なトンネルを形成していた。これらのことから、未分化型シュワン細胞は、がん細胞の細胞遊走と組織への浸潤において、ガイド役として機能している可能性が示唆された。
すべて 2021
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Cancer Res
巻: 81 ページ: 489-500
10.1158/0008-5472.CAN-19-2988.