アルツハイマー病患者及び認知機能正常者の血漿を用いた網羅的プロテオーム解析を試み、同定されたリストの中で変動したタンパク質については、それらの抗体を用いたウェスタンブロットで確認を試みた。その中で、ApoEのC末の抗体を用いたウエスタンブロットにおいて、アルツハイマー病患者及び認知機能正常者の血漿はともに約35kDaにApoEの強い反応性を示すバンドが確認できた。これらの中でApoE4を持つ検体については、約35kDaのバンドに加えて、極わずかであるが、約50kDaにブロードなバンド、更には高分子領域までスメアを呈する反応性を示した。ApoE4保有者は認知機能正常の段階からこのような変化がみられ、アルツハイマー病患者の血漿の方が強い反応性を呈した。C末以外の抗体ではこのような変化は見られなかったことから、ApoEのC末側がこれらの変化に関わっていると考えられた。また、アルツハイマー病脳の前頭皮質の質量分析によってApoEのC末領域 (224-299)が蓄積しているという報告があり、特にApoE4を持つ検体ではC末領域の蓄積が多いことが示されている。このことから、おそらく血漿中に見られる変性したApoEは脳内のApoEの一部が血漿中に混在している可能性が推測された。これら変性したApoEの違いをさらに詳細に質量分析装置で解析し、変化がみられる領域を絞り込んでいるが、正確な修飾の同定までには到っていない。これらの変化を特定することで、アルツハイマー病の早期診断に利用できる可能性がある。
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