研究課題/領域番号 |
18K07384
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
羽田 沙緒里 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (40581012)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 |
研究実績の概要 |
認知症最大の疾患であるアルツハイマー病(AD)の患者数急増が社会的な問題となっているが、いまだ効果的な治療法は確立されていない。ADの原因因子であると考えられているAβやTauをターゲットした疾患修飾薬がこれまでに多数開発されてきたが、Aβに対する抗体であるアデュカヌマブが承認される見込みであること以外は、期待されたAD治療への有効性を証明できたものはない。そのため新たなAD治療ターゲットが求められている。 これまでにAD関連タンパク質であるAlcadeinに着目し、その代謝産物の一種であるp3-AlcβがAD発症に伴って脳脊髄液中で減少すること、さらにこのペプチドがAβの毒性に対して抑制的な機能を有することを明らかにしてきた。そのためp3-Alcβは新規AD治療ターゲットとして有用であると考えられた。 本研究ではp3-AlcβをAD治療薬として応用するために、その作用メカニズム解明を行うことを目的としている。本年度は、前年度までに明らかにしてきたAβ毒性に対する抑制的な機能発現メカニズムを、マウス初代培養神経細胞を用いて詳細に解析した。その結果、p3-AlcβにはAβ毒性に対する抑制的な効果のみならず、細胞の賦活化作用も有することを見出した。この細胞の賦活化作用のメカニズムが神経細胞のミトコンドリアの活性化を介した作用であることが明らかになったことから、アルツハイマー病のみならず他の神経変性疾患に対しても有用性であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はマウス初代培養神経細胞を用いて、p3-Alcβペプチドの作用メカニズム解析を実施した。p3-AlcβペプチドにはAβ毒性に対して抑制的な機能を有するだけではなく、細胞を賦活化作用があることを見出し、これがミトコンドリアの活性化を介した作用であることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに開発されてきたAβに対する修飾薬とは全く異なるメカニズムによって作用する脳内内在性ペプチドであるp3-Alcβは、新規AD治療薬のみならず他の神経変性疾患に対する有用性も期待される。今年度は作用メカニズム解明を、マウス初代培養神経細胞を用いた解析から明らかにしたので、今後はマウス生体内における効果の検証を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は培養細胞を用いた実験を中心に行い、次年度以降に使用する遺伝子改変マウスの個体整備を行った。よりコストのかかる実験動物を用いた実験のために、当該年度の未使用分を次年度使用額とする。
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