研究課題/領域番号 |
18K07385
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
東海林 幹夫 弘前大学, 医学研究科, 教授 (60171021)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 常染色体優性遺伝性アルツハイマー病 / バイオマーカー / 脳脊髄液 / 血液 / Abeta / リン酸化タウ |
研究実績の概要 |
常染色体優性遺伝性Alzheimer病(DIAD)はAPP,PSEN1/2の単一遺伝子変異によって若年性認知症を発症する.浸透率は100%で,親のほぼ同様の発症年齢と臨床経過を示す.発症以前からの認知機能やバイオマーカーの自然経過の解明と根本的な発症予防の開発に極めて少数ながら強力なエビデンスを創出するため世界的に注目されている.本研究では弘前家系 (Hirosaki-1)を含む3つのDIAD家系の協力の下に,1)臨床経過,2)最新の認知機能検査と3)バイオマーカーの自然経過を明らかにすることを目的としている.平成30年度は,弘前家族会の集会を繰り返してきた実績のもとに,それぞれの家系に本研究の参加の同意をいただき,遺伝学的解析,遺伝カウンセリング,神経学的診察と神経心理学的検査を行った.MRI,SPECTなどの画像診断を追加した.書面による同意のもとにCSFを採取し,全例で血液の採取を行い,血漿分離と保存を行った.LC-MS/MSでは標準物質と内標準物質は安定同位体標識されたAbetaを用い島津30ADLCシステムNexera X2(島津製作所),質量分析計はQtrap5500もしくはQtrap6500(Sciex)を使用し,SF(100~200μL)に内標準溶液を加えた後,固相抽出法もしくは溶媒抽出法により前処理を行いてAbeta38~43を測定した.IBL社製リン酸化tauP181モノクローナル抗体を用いた脳脊髄液ELISAを100例の検体で標準化し,超高感度血漿リン酸化tau自動化ELISAシステム (Simoa Quanterix社)を開発中である,連携研究者とともに詳細な症例解析を行っている.血液Neurofilament light chainに関しては,弘前家系をふくむ国際共同研究により,アルツハイマー病の発症予測に重要である事を検討し,発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度に予定した家族解析は,順調に進行している.また,新たに弘前家族会が発足し,研究参加の促進が予想される.質量分析による脳脊髄液Abeta38,40,42,43の基本的標準化と測定は終了し,論文作成し投稿中である.脳脊髄液tau,リン酸化タウ測定の新たなELISAによる測定は終了し,統計解析を行い,論文作成中である.DIADの血液バイオマーカーの検討では,弘前家系を含む国際共同研究によって,発症16年前から変化する,臨床的に重要なバイオマーカーであることを発表した.
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今後の研究の推進方策 |
平成31年度の予定どうり研究を進める.すなわち,既に標準化した各社各種ELISAによって,Abeta38, 40, 42, 43やtau各分子種類の測定を行い,新たな神経障害のバイオマーカーの測定を完了する.測定結果を評価し,保因者,非保因者および臨床段階に分けて統計処理を行い,それぞれのバイオマーカーの有用性を検証する.結果を医学雑誌に発表するとともに,世界的な発信を行う.
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次年度使用額が生じた理由 |
薬剤の購入時に,数量などを充分に吟味し,節約に努めたために残額が生じた.今後の成果発表に関わる支出に充当する予定である.
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