研究課題/領域番号 |
18K07391
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田辺 康人 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (10311309)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 / 筋萎縮性側索硬化症 / TDP-43 |
研究実績の概要 |
今年度においては大脳皮質を構成する皮質錐体細胞を解析対象として、果たしてFF-MN特異性付与因子により前年度において培養細胞において示されたのと同様に皮質錐体細胞においても効率よくTDP-43タンパク質凝集体形成が誘導されるのかどうかを解析した。従来からのヒトTDP-43タンパク質を発現するトランスジェニックマウスを用いたアプローチではヒトの症例で認められるTDP-43タンパク質の細胞学的・生化学的変化を部分的にしか再構築できていないことから、タモキシフェンによる遺伝子発現誘導を組み合わせたマウス胎仔に対するin vivo電気穿孔法によりTDP-43タンパク質を成体皮質錐体細胞に発現誘導する実験系を構築し解析することを試みた。遺伝子導入後2週間以上経過してからのタモキシフェンを用いた発現誘導となるために遺伝子導入されたレプリコンが安定的に宿主の遺伝子に組み込まれるようにトランスポゾンのシステムを組み合わせた。大脳皮質深層錐体細胞の発生時期として知られている胎生期13.5日齢の妊娠マウスの胎仔脳に対して、ヒトTDP-43(野生型、M337V家族性ALS変異導入TDP-43)さらにはFF-MN特異性付与因子および細胞標識系としての蛍光タンパク質をコードする遺伝子群を共発現させ、皮質層形成が終了する生後7-10日齢においてタモキシフェンを経口または腹腔内投与した。その後、生後30-40日齢まで飼育し脳を取り出し組織学的にTDP-43の発現分布および凝集体形成を解析した。その結果トランスポゾンにより安定的に皮質深層から浅層にかけての錐体細胞のみならずグリア細胞においても蛍光タンパク質の発現誘導を認めることができたが、ヒトTDP-43タンパク質の発現レベルは宿主マウス皮質錐体細胞における内因性のものとほぼ同レベルにとどまり、TDP-43異常蓄積も認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
培養細胞を用いたin vitro実験系のみならず、マウス皮質錐体細胞を用いたin vivo実験系の構築にも及んだ。
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今後の研究の推進方策 |
解析時期(生後30-40日齢で今後も検討するのか、加齢後の変化をみることがやはり必要ととされるのか、より早い時期で解析してしまうのか)を検討する必要があると考えられる。in vivo実験系としては、幾つかの候補遺伝子を同時に遺伝子導入しうる利点をもつin vivo電気穿孔法を工夫していくのみならず、幾つかの弱点は持つことは明らかではあるが従来からのヒトTDP-43発現トランスジェニックマウスを実験系として導入し組み合わせていくことが望ましい。
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