研究課題
我々は、恒常的Gs活性化型G蛋白共役型受容体GPR3の中枢神経系における機能について検討を続けており、これまでにGPR3が神経細胞生存・分化に寄与することを明らかにしている。最近、小脳顆粒神経細胞においてGPR3が神経突起先端に集積し、突起先端のPKA活性化に寄与することを解明した。以上の背景を踏まえ、本研究ではGPR3の神経細胞におけるシナプス機能に与える影響を検討し、中枢神経障害に対する新規再生療法へ応用を模索することを研究目的としている。本年度までに、神経細胞分化に伴うGPR3発現誘導がシナプス蛋白の一つであるシナプシン発現やリン酸化に与える影響についてPC12細胞を用いて検討した。PC12細胞を血清減少とNGF添加により分化させると、分化刺激12~48時間後で GPR3mRNA発現上昇を認めた。また、PC12細胞においてGPR3-GFP融合蛋白は神経突起先端方向に運ばれ突起先端に集積し、神経突起先端部位でシナプシン1、シナプシン2と共局在した。また、PC12分化に伴うシナプシン発現については、シナプシン2 mRNAは刺激後48時間後まで発現上昇したが、シナプシン1、シナプシン3 mRNAの発現量は低下した。さらに、shRNAによりPC12細胞分化に伴うGPR3発現を抑制すると、分化24-48時間後においてシナプシン2mRNA発現が有意に減弱し、シナプシン2蛋白リン酸化についても分化48時間後において有意な減少を認めた。一方GPR3発現抑制により、PC12細胞分化48時間後においてExtracellular Signal-regulated Kinase(ERK)リン酸化についても有意な減少を認めたが、srcのリン酸化については影響が見られなかった。以上の結果から、GPR3は神経細胞分化に伴い発現が増加し、シナプシン2発現やシナプシン2、ERKリン酸化に影響を与えることにより、プレシナプス機能を修飾する可能性が示唆された。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (8件)
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